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社員の悩みや課題に向き合う「田町のジョブコーチ」が、障害者雇用の日常やちょっと役立つノウハウを紹介する当コラム。今回は「支援担当者への支援」について、当社の例をご紹介します。

共感力の高さゆえに、無力感や感情の負担が大きくなる

“支援する側である担当者が疲弊し、次々辞めていってしまう。”
これは、企業の支援担当者が集まる会合や勉強会の場で、しばしば取り上げられる問題です。

社員の悩みを一緒に抱え込んでしまい、解決できないことに無力さを感じてしまう。相談を受けた内容を自分事として捉え、涙が止まらなくなってしまう。日々あらゆる相談を受ける中でさまざまな感情に反応してしまい、支援する側が先にダウンするということが、多くの企業では珍しくないようです。

翻ってみて当社はどうなのか。2015年に私が当社ではたらき始めて以来、 支援担当者が次々辞めて困った、なんて経験はありません。それから7年、私は当社の支援担当組織のリーダーをしましたが、これまでに退職された支援員は2名となり驚異的な少なさです。このこと自体が珍しいことかどうかは実はよく分かっていませんが、それでも「本当ですか?支援員が辞めない秘訣を教えてください」と驚かれることが度々あります。

正直、「疲弊を防ぐために取り組んでいること」は特にありません。ただ、心当たりのあることが、大きく2つほどあります。

「原因」に目を向け、連携して解決する

まず、そもそも私たちは課題や問題を自分たちだけで解決しようとしません。その代わり、問題の原因を的確に把握し、解決してくれそうな人たちにいち早く報告します。

例えば、社員のプライベートの問題は支援機関に。体調面の問題なら医師に。業務上での課題は現場のリーダー陣に。ポイントは、問題の芽が見えたら素早く報告することです。(※医師への連絡は当社から直接ではなく、支援機関を通して行います。)

「その人」だけにフォーカスせず、その人の周辺にある「原因」に目を向け、解決するための連携策を考えるのが私たちの仕事。そんなスタンスでいるのが、疲弊しないでいられる要因の一つかもしれません。

ときには愚痴を言い合ってもいい

もう一つのコツは、当たり前のことかもしれませんが、支援担当間のコミュニケーションを大事にすることです。そのコミュニケーションとは……誤解を恐れずに言いますと、“支援担当同士で愚痴を言い合う”ということです。

自分たちが感じる無力さや、悩み、逆に喜びなどを、支援担当者同士で遠慮なく言い合います。同じ仕事をしているからこそ、分かり合えることがたくさんあります。「それでいいんじゃないかな」とひと声かけるだけでも、肩の荷を軽くするためにとても意味のあること。お互いがお互いの支援者になる、という感じでしょうか。

支援する側も、ありのままに、できる範囲で

支援の仕事とは、ともすれば「自分たちが解決せねばならない」「(自分たちも)正しくあらねばならない」と思いがちな仕事です。でも、ときには「できないこともあるんだ」とつぶやいてもいいと思っています。相談してくる社員に「等身大でいいんです」と伝える支援担当者自身もまた、ありのままでいましょう、できる範囲で頑張りましょう。そんなことを、少し脱力感を伴って支援担当者に話しています。

もちろん、支援担当者がそうしていられるのは、定期面談をしてくれる現場のリーダーや、遠方からもはるばる来社してくださる支援機関の方々の協力があってのこと。そうした方々との連携を密に取りながら、いかに肩に力を入れずに、社員の隣に居続けられるか。そんな視点で支援活動を行っている当社です。