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社員の悩みや課題に向き合う「田町のジョブコーチ」が、障害者雇用の日常やちょっと役立つノウハウを紹介する当コラム。今回のテーマは「新型コロナウイルス」と精神・発達障害についてです。精神・発達障害当事者がコロナに罹って療養する際、何に気を付けるべきか、実際に感染された方の実体験をもとにお伝えします。なお症状などには個人差がありますので、一つの例としてご参考ください。

精神・発達障害のある友人の経験によると……

新型コロナウイルスの感染拡大が始まって約3年。5月からは感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられることが決定し、会社内で感染者が出ることも、もはやめずらしくありません。私の周りでも、都内在住の精神障害当事者の知人が家族全員感染してしまうケースがありました。

その知人は感染対策を徹底し、家と会社の往復以外、不要不急の外出はなし。それでも家族経由で感染してしまったそうです。家族の中で友人だけが、都内ホテルで隔離療養を行いました。その時のことを、「私の経験が誰かの役に立てば」と闘病日記にまとめて見せてくれました。発症から療養、帰宅までにおける「不安な中でも気持ちを落ち着かせるポイント」がいくつか書かれていましたので、精神障害当事者や周囲の方が罹患したときの参考になればと紹介したい思います。

自分の特性・症状を病院や保健所にしっかり伝える

最初に言えることは、病院や保健所など関係各所は対応に追われ、なかなか連絡が取れないということ。友人は発熱外来に問い合わせの電話がつながるまで、180回掛けなおしたそうです。それだけで不安になりそうですが、「保健所や病院も異例の事態の中で一所懸命頑張っているんだ、いつかは連絡が取れるから安心しよう」と思うことが大事とのこと。

友人は家族と離れてホテル療養でしたが、理由は基礎疾患があるから。手帳を持っていること、精神障害で定期通院していることが基礎疾患と判断されたようです(※自治体や症状によって判断が違うかもしれません)。そして、ホテル療養の際のポイントとして本人が言うには、保健所などからの電話に「自分の症状・特性をしっかり伝えること」。

当時、都内には大型の施設に仕切りを置いた集団療養施設の導入を検討していたそうです。本人は大人数の中に置かれること、自分以外の物音を聞くことがとても苦手で、そのことをしっかり伝えたことでホテルの個室で療養することができました。なかなか難しいことですが、ここはしっかり伝えましょう。

薬は多めの持参を。コロナ関連のニュースを見るのは控えめに!

また、よく言われるのが「服用している薬を忘れず療養先へ持っていくこと」。必要最低限の量ではなく、数日、場合によっては数週間分を用意し、頓服薬があればそれも多めに持参することが大切だそうです。療養期間分はあるとわかっていても、「万が一療養期間が伸びたらどうしよう」という不安がよぎるので、多すぎるくらい準備することが安心だそう。また服用している薬を聞かれるので、お薬手帳や携帯アプリを準備しておくことも大事です。

そして療養中。ホテルの一室から出ることができないので、症状がいったん落ち着けばとにかく暇になり、暇だと不安なことがつい頭をちらついてしまう。ですから友人は、コロナに関するニュースは見なかったそうです。特に街でインタビューを受けている人を見ると、「次はこの人がコロナに罹ってしまうかも!」と気が気じゃなくなるそうです。

あとは「毎日イベントを作ること」。幸いにも友人には家族がいるので、夕食時間を揃えてテレビ電話で話しながら食事をしたそうです。「明日も顔を見ながら食事ができる」と思えることや、家族とのたわいもない会話が、本人をホッとさせたそうです。

これらの準備を整えたことで、友人は焦ることなく、重症化することなく、また睡眠など生活が乱れることなく無事に療養期間を終え自宅に戻れたそうです。症状や置かれた環境は人それぞれですが、もしご自身や支援する社員が罹患した際にこの記事が少しでも役に立てば幸いです。

……と書いておきながら、ワタクシ田町のジョブコーチも子ども経由で一家3人陽性になってしまいました。私たち家族は自宅隔離でしたが、友人のアドバイスは効果的で、コロナ関連のニュースはあまり見ず家族とマスク越しで会話をしながら、前向きに過ごすことができました。(咳、発熱、のどの痛みがかなりつらかったですが……。)みなさんも、お気を付けください!