社員の悩みや課題に向き合うジョブコーチが、障害者雇用の現場で感じたことや実践をお伝えします。今回は、「成長できない」と感じられる場面の背景にある、支援者自身の見方に目を向けてみます。無意識の前提に気づいたとき、現場にどのような変化が生まれるのかを考えていきます。

研修で投げかけられた問いに、少し立ち止まった

ジョブコーチとして、社内外の研修でお話しする機会があります。新卒社員、支援機関のスタッフ、企業の障害者雇用担当者など、立場の異なる方々と関わる中で、ある共通の問いに触れることがあります。
「特性が強い人や定型業務中心の人が増えたら、現場が回らなくなることはありませんか?」
この問いを聞いたとき、私は少し考え込みました。
おそらく多くの現場で感じられている、率直な不安の一つなのだと思います。
ただ同時に、「障害がある=成長できないかもしれない」という前提が、どこか自然に置かれているようにも感じられました。
そして、その見方は決して他人事ではなく、自分の中にも少なからずあったのではないか――そう気づかされるきっかけにもなりました。
障害者雇用の現場で「成長できない」と感じられる背景には、こうした支援者側の見方が影響している場面もあるのかもしれません。

「成長できる」という可能性はどこから広がるのか

成長がゆっくりと進んでいるように見える時期があったとしても、それだけでその人の可能性が決まるわけではありません。
たとえば、

  • できることが限られて見える時期
  • 配慮を優先するあまり役割が狭くなっている時期
  • 失敗を避けることで挑戦の機会が少なくなっている時期

こうした状況が重なることで、本来の力とは別の要因によって、「まだ成長の機会が十分に活かされていない状態」が生まれていることもあります。
振り返ってみると、偏見という言葉は、否定や差別だけを指すものではないのかもしれません。
「無理をさせない方がいい」
「この人にはここまでが合っていそうだ」
「まずは安定して続けることが大切」
こうした配慮の中にも、結果として可能性を狭めてしまう前提や、小さな偏見が含まれてしまうことがあります。
そうした無意識の前提に気づいたとき、「成長できない」と見えていた状態が、「どのようにすれば成長できるか」を考える視点へと変わっていくこともあるのではないでしょうか。

見方を変えたとき、現場は少しずつ動き出した

その後、私が意識するようになったのは、「今できること」だけでなく、「これから広がる可能性」にも目を向けることでした。
すると、日々の現場の中で、少しずつ変化が見えてきました。
言葉に詰まることが多かった社員が、時間をかけながら自分の考えを伝えられるようになり、やがて後輩に声をかける役割を担うようになりました。
また、業務量の負荷を感じやすかったメンバーが、手順や相談の仕方を整えながら経験を重ね、チームの中で安定して動けるようにもなりました。
契約社員から正社員へ、担当業務からリーダー業務へと役割が広がっていったケースもあります。
こうした事例に触れるたびに、障害者雇用における成長は、特定の人だけに起こるものではなく、関わり方や環境の中で引き出されていくものだと感じるようになりました。
もしかすると、「成長できない」と見えていた背景には、本人ではなく、見ている側の視点の影響もあったのかもしれません。

支援者が変わると、やりがいとキャリアアップの見え方も変わる

支援の中で起きる変化は、本人だけのものではありません。
少しずつ役割を広げていく姿や、自分なりの工夫を重ねていく姿に触れる中で、「ここまでできれば十分」という見方が、「次はどんな挑戦ができるだろう」という期待へと変わっていきます。
この変化こそが、障害者雇用に関わるやりがいの一つなのではないかと感じています。
また、キャリアアップは昇格や役職だけに限られるものではありません。

  • 落ち着いて相談できるようになる
  • 仕事を一人でやりきれるようになる
  • 業務の質が安定する
  • 自分に合ったはたらき方を見つける

こうした一歩一歩も、確かな成長として積み重なっていきます。
障害者雇用の現場で「成長できない」と感じられたとき、見直すヒントは、本人の限界ではなく、見方そのものにあるのかもしれません。
小さな変化が自信につながり、その自信が次の挑戦を生み、さらに成長へとつながっていく。 そのような循環が生まれたとき、支援の意味合いや手応えも、これまでとは違った形で見えてくるのではないでしょうか。