
「またこの季節か…」と感じているあなたへ
「また、この季節が来てしまった……」
そう感じながら、このページを開いてくださったのではないでしょうか。
朝、布団から起き上がれない。理由もなく涙が出る。通勤電車のなかで急に不安が押し寄せて、降りる駅を間違える。季節の変わり目に精神不安定になり、なんとなく体調も悪い。気分も沈みがちで、「今の就労を続けられるだろうか」「また休んでしまうかもしれない」――そんな就労への不安や、仕事中のメンタル不調が、ふと頭をよぎる方も多いはずです。
でも、安心してください。季節の変わり目に精神不安定になったり、体調が悪くなったりするのは、あなたの心が弱いからではありません。ジョブコーチが現場で支援しているメンバーにも、年度の切り替わりや寒暖差の大きい時期に、同じように心が揺らぐ方がたくさんいます。
この記事では、季節の変わり目に精神不安定になるしくみをコンパクトに整理したうえで、障害がある方の体調管理のヒントと、職場で支援担当者と当事者が「適度な距離感」を保つための具体例を、現場目線でお伝えします。
なぜ、季節の変わり目に気分が不安定になるのか
「気分の落ち込みの原因は、自分の性格のせい?」――そう思い込んでしまう方もいます。でも実際は、私たちの身体が環境の変化に適応しようとして、フル回転で稼働し、エネルギーを消耗している状態。心も一緒に揺らいで当然なのです。主な原因は、大きく次の4つに整理できます。
- 自律神経の乱れ:寒暖差や気圧の急激な変化に対応しようとして、自律神経がオーバーワーク状態に。倦怠感や不眠とともに、気分の不安定さや焦燥感が出やすくなります。
- セロトニン(幸せホルモン)の不足:日照時間が短くなる秋冬や梅雨時は、精神を安定させるセロトニンの分泌量が低下するため、ネガティブな思考に支配されやすくなります。
- 生活環境の変化によるストレス:進学・就職・異動など、たとえ前向きな変化でも「未知への適応」は大きなストレス。気を張りすぎた結果、あるときぷつりと糸が切れることもあります。
- アレルギー症状による睡眠の質の低下:花粉症などで眠りが浅くなると脳の疲労が回復せず、精神的なレジリエンス(回復力)が落ちてしまいます。
詳しいメカニズムは医療機関や、厚生労働省『みんなのメンタルヘルス総合サイト』でも丁寧に解説されています。「自分の場合はどれが当てはまるかな」と気になった方は、あわせて参考にしてみてください。
就労を続けるための、無理のない体調管理
障害があると体調が悪くなったり、体調管理が難しかったりする――そう感じる方は少なくありません。仕事中のメンタル不調を感じたとき、「もう少し頑張らなきゃ」と無理を重ねるのは逆効果。不安定な時期を乗り切るコツは、完璧を目指さないことです。自律神経を外側からそっと支える感覚で、日常に取り入れやすいものから一つだけ始めてみましょう。
- 朝の光を5分浴びる:カーテンを開け、窓際で光を感じるだけ。曇りの日でも室内照明よりずっと強い光が脳に届き、体内時計がリセットされます。
- 39〜40℃のぬるめのお湯にゆっくり浸かる:交感神経の興奮をしずめ、お風呂上がりに自然な眠気が訪れます。42℃以上は逆効果なので注意。
- トリプトファンを含む食事:バナナ、納豆、豆腐、卵、チーズなど、セロトニンの材料となる食材を意識的に。「朝食にバナナヨーグルト」程度の小さな工夫でOKです。
- 寝る前のスマホを控える:ブルーライトはメラトニン分泌の妨げに。せめて寝る前1〜2時間はオフを。
- 「何もしない時間」をつくる:脳を意識的に休ませる空白時間が、回復のスイッチになります。
ぜんぶやろうとしなくて大丈夫。「今週はこれだけ」と決めて続けるほうが、長い目で見ると就労の不安を和らげてくれます。
年間の体調のリズムに合わせ、適度な距離感で声をかける
ここからは、当事者を支える企業の支援担当者の方や、ご家族にもお読みいただきたいパートです。
精神・発達障害のあるメンバーを長く支援していて感じるのは、一人ひとりに「年間の体調のリズム」があるということ。同じ人でも、春の異動シーズン、梅雨、夏の終わり、年末年始など、不調になりやすい時期はある程度パターン化されていることが多いのです。
そのリズムをジョブコーチや定着支援担当者と共有しておくと、職場側も「そろそろあの時期だね」と早めに身構えることができます。大切なのは、その時期が近づいたタイミングで、「適度な距離感」で声をかけること。これが、意外と難しいのです。
具体的には、こんなイメージです。
- 「最近、調子どう?」と日常会話の延長で聞く
わざわざ会議室に呼んで「面談しましょう」と切り出すと、相手は身構えてしまいます。給湯室で飲み物を取りに行ったついで、業務の引き継ぎ後の数秒など、日常の隙間に自然に差し込むのがコツです。 - 「春先は気圧変化が大きくて、私も最近だるくて」と自分の話を先にする
「あなたは大丈夫?」だけを聞かれると、当事者は「心配されている=弱いと思われている」と感じてしまうことがあります。自分の不調を先に開示することで、相手も「実は私も…」と話しやすくなります。 - 「無理してない?」ではなく「ペース、どう?」と聞く
「無理」という言葉は、すでに無理をしている人にとっては圧になります。「ペース」「リズム」「ご機嫌」など、ニュートラルな表現に置き換えるだけで、相手の受け取り方は大きく変わります。 - 業務量を「先回りで」少しだけ減らす
不調になりそうな時期は、本人から申告される前に、優先度の低いタスクをそっと外しておく。「これは来月でいいよ」と一言添えるだけで、当事者は「気にかけてくれている」と安心できます。 - 「休みやすい空気」をチーム全体で共有する
本人にだけ気を遣うのではなく、「うちのチームは、不調の日は遠慮なく休んでOK」というルールをチーム全体に浸透させておく。これにより、当事者は「自分だけ特別扱い」という負い目を感じずに済みます。 - 「声をかけない」という選択肢も持つ
不調のときは、人と話すこと自体がエネルギーを使います。「いつもどおり挨拶だけして、あとはそっとしておく」――この「見守る距離感」もまた、立派な支援のかたちです。
ポイントは、「踏み込みすぎず、放置しすぎず」。適度な距離感は人によって違うので、一人ひとりに合わせて試行錯誤しながら、ちょうどよい位置を一緒に探っていく。これが、長くともにはたらくための、現場で見つけてきたコツです。
今年を乗り切れば、きっと来年はもっとラクに
季節の変わり目に精神不安定になることは、誰にでも起こり得る、ごく自然な揺らぎです。
「また同じ時期にしんどくなった」――そう気づけたなら、それはあなたが自分の体調のリズムを一つ手にしたということ。気づけたなら、来年は今年より少し早めに、少し上手に備えられます。
無理せず、頼れる支援者や医療機関、職場のジョブコーチと一緒に、自分にとって心地よい距離感とペースを探していきましょう。今年を乗り切れば、きっと来年はもっとラクになります。


