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社員の悩みや課題に向き合う「田町のジョブコーチ」が、障害者雇用の日常やちょっと役立つノウハウを紹介する当コラム。今回は、当社で長くはたらいている人の特徴や傾向をお伝えしたいと思います。

精神障害者の平均勤続年数はわずか3年2か月

厚生労働省が2019年に発表した「障害者雇用実態調査」によると、障害のある人の平均勤続年数は、身体障害者が10年2カ月、知的障害者が7年5カ月、精神障害者が3年2カ月、発達障害者が3年4カ月。障害によって長さに差はありますが、安定的な長期就業は障害者雇用におけるとても大きな課題で、答えは見つかっていません。私たちも日々探している状況です。

そこで今回、当社で実際に長く活躍している人に、どんな工夫・体験をしたのか聞いてみました。もちろん、全員に聞いたわけではないので、あくまでも「そういった方もいるのね」という心持ちで読んでいただけるとありがたいです。

長く活躍するコツ①「気持ちを紙に書いてみる」

「何かが起きたときは、紙に書いて文字化して分類していました」と語るのは、2015年に入社し、今はリーダーとして活躍する社員(気分障害)です。

この社員は、何かが起きて気分が揺らいだときに、まず「何が起きたか」「どんな行動を取ったか」「どんな感情だったか」を紙に書き出すそうです。そして書き出したものを客観的に眺め、前向きに捉えたうえで、行動するためのアドバイスを書き加えていきます。
その際、自分自身にではなく“友人に対して書く”ように意識するのがコツだとか。「自分を客観的に見つめる行動を繰り返せるようになりました」とその社員は言います。

また彼は、「自分が嫌われているかもしれない」と思いこむ症状が強くありました。そんな気持ちになった際は、「私のこと嫌っていますか?」と相手にストレートに聞いたそうです。

そういう質問をするのは勇気がいると思います。でも、その勇気を持って心の中を「掃除する」作業は、確かに有効だなあと思いました。

長く活躍するコツ②「やらないと決めたことを守る!」

今度は2014年に入社したリーダー(気分障害)のコツを紹介します。それはズバリ、「やらないことを決める」。

この社員は、前職の激務が原因で体調を崩しました。そこで「残業=美学という考え方をやめる」そして「無理・無茶なはたらき方をしない」と決めて、それを実行しています。
これはなるほどなあ、という感想。同時に、これならできる人が多いと思いました。

またこの社員は、自分の行動を「求められていること」「今できること」「誰かに言われたらやること(逆に言うと言われない限りやらない)」の3つに分類しているそうです。最初の社員と同様に、この社員も自分の行動を客観的に整理しているなと感じました。

「いまの自分から目をそらさない」「等身大の自分を受け入れる」……突き詰めると「自己認知」ということになるのかもしれませんが、それが安定就労や活躍につながっているのだなと改めて感じました。

長く活躍するコツ③ 新しい場を提供する

最後にご紹介するのは、パーソルダイバースが会社として実施している長期安定定着への工夫です。

当社には2018年ごろまで、各チームのリーダーやマネジャーが、自チームに在籍しているメンバーの異動を促進する取り組みがありました。異動によって新たな自分に出会う機会を提供し、やりがいや成長を実感してもらうことで、長期安定就労につなげるという狙いです。

この取り組みによって実際に異動を果たしたあるメンバーは、「自分の殻が破れたようで、異動してよかった」とポジティブな感想を話してくれました。こちらから新しい場を提供するのも、安定定着のための一つの試みになるでしょう。