国内初となる「先端ITを学べる就労移行支援事業所」として、2019年11月に開所した「Neuro Dive(以下、ニューロダイブ)」。開所に至った経緯や目的をお伝えした前半に引き続き、後半では気になるカリキュラム内容や今後の展開についてお届けします。

吉田 岳史

パーソルチャレンジ(当時)株式会社
コーポレート本部 事業開発部
Neuro Diveグループ

所 孝子

パーソルチャレンジ(当時)株式会社
コーポレート本部 事業開発部
Neuro Diveグループ
Neuro Dive秋葉原 センター長

体験講座でレベルを確認。“自走力”がポイントに。

所 ニューロダイブで扱う先端IT分野は、データサイエンスやディープラーニング、統計学などレベルが高いため、入所後のギャップをなくすために説明会と体験講座を必ず行っています。体験講座では、2時間半の講座を3日間かけて実際に受けていただきます。1日目はオンライン講座を受講し、2日目はPCを使って実際に環境構築やコーディング作業をして、3日目にその技術を用いた成果物を作る。なかなか大変ですが、この体験講座をクリアした方がご利用されるケースが多いですね。

吉田 入所後はUdemyという世界最大級のオンライン動画学習サービスを使って行うので、自己学習が基本になります。ですから、自分で学習を進められるかどうかは体験会で判断すべきポイントの一つ。利用者さんを見ていると、体調が悪い場合を除けば、皆さん能動的に黙々と学ぶことが得意ですね。障害特性なのかもしれませんが、曖昧なことが苦手な方が多いんです。分かるか分からないか、分からないならわかるまで学ぶ。

所 エラーや疑問点にぶつかっても、こちらから助けるのではなく、自分で解決できるように工夫してもらいます。「自走力」を重視した育成は、ニューロダイブの大きな特長です。

企業に発表できるレベルの成果物を作ることが目標。

所 カリキュラムの構築に関しては、Udemyの提供する約200の講座の中から、専任スタッフが取捨選択して独自のカリキュラムマップを作成します。データサイエンス基礎、ビジネスデータ分析、データの可視化・応用、業務改善などのテーマに分かれ、利用者さんはご自身の習得したい内容を選んで学びます。目標とするのは、習得した知識やスキルを活かして成果物を作り、企業に発表できるレベルになること。企業が見学訪問に来られる機会が多いので、その際に利用者さんがパワーポイント資料などを作って発表します。

ITスキル以外の、就労そのものに向けたトレーニングとしては、朝会・夕礼を必ず行い進捗報告や疑問点の確認をします。実際の仕事に似せたやり方ですね。もちろん自己分析やセルフマネージメント、コミュニケーションスキルの講座も用意しています。なかなか成果物を作れない方や、職業準備性が整わない方には、課題報告の場を設けて解決のサポートも行います。
そうしてトレーニングを続け、企業への発表を何度か経験し、職業準備性も整っていると判断できたらいよいよ実際の就職活動に移っていきます。成果物を作れるレベルに達するのは、早い人で半年、通常は1年くらいです。

高い専門性を持つ、より開かれたサービスへ。

吉田 すでに就職が決まった方の中には、給与も役職も前職から上がったというケースもあり、ご本人もご家族も大変喜んでいらっしゃいます。他の支援施設から移られてきた方も、就職後に望める賃金やキャリアを比較してニューロダイブに決めたとおっしゃっていました。新型コロナウィルス感染拡大の影響で企業実習などが受けづらくなってはいますが、リモートでの実習の仕組みなども構築できてきているので、こうした就職実績をこれからも増やしていきたいですね。

今後の展開としては、現在ある秋葉原・横浜・福岡の3か所に加え、都市部を中心に10事業所くらいまで拡大する予定です。また、2021年の夏には「Neuro Dive Online」もスタートしました。これは就労移行支援事業とは切り離し、現職中の方や障害の診断がない方にもご利用いただける開かれたサービスです。

青森でオンライン受講されていた方が、「ITだけでなくビジネススキルも習得したい」とわざわざ横浜へ引っ越し、通所に切り替えた例もあるんですよ。
より幅広い方が高度な先端IT分野で活躍できるよう、さまざまなステークホルダーの方々のご意見も聞きながら、今後もサービスをアップデートさせていきたいと思います。