パーソルグループの特例子会社であるパーソルダイバースは、大阪に3つオフィスがあります。その一つ、西本町オフィスではたらくA.Uさんは、2021年10月入社。1年半後にはサブリーダーに着任しました。

Aさんの主な仕事は、パソコンを使った事務入力業務。自身の担当業務をこなすほか、サブリーダーとして配下のメンバーの状態を把握し、業務量の調整や相談対応も行っています。さらに、別事業部に赴き研修講師を務めるなどマルチな活躍も。

Aさんの障害は注意欠陥多動性障害(ADHD)です。ADHD含めて発達障害の人たちは「マルチタスクが苦手」と言われていますが、日常的に多様なタスクをこなすAさん。それを可能にしている工夫は何か、会社の配慮は何か。多方面で活き活きとはたらく姿を見せる秘訣を聞いてみました。

サブリーダー U.A

パーソルダイバース株式会社 受託サービス第1本部
Staffing受託第2事業部 西日本オーダーサポートグループ 第1チーム

ミスが多いのは、自分の怠慢のせいじゃない

編集部 現在の業務内容を詳しく教えてください。

A メンバーのサポートが主な業務で、入力したデータのダブルチェックや、健康管理面談をおこなっています。入力するのは、私たちのお客様であるグループ企業が、外部企業様からお預かりした求人データです。例えば、お願いしたい仕事内容や、給与、勤務時間などですね。

私がメンバーのときは、決まった業務を決まったやり方で繰り返すこの仕事が好きでした。サブリーダーになってからは、「周りのメンバーに声をかけないといけないな」と考えるようになりました。

編集部 サブリーダーの仕事にはすぐに慣れましたか?

 最初は戸惑いましたが、2週間もすると少しずつ慣れてきました。上司から「焦らずに業務をひとつずつ覚えれば大丈夫」と声をかけてもらっているので心強いです。

編集部 少し話がさかのぼりますが、ご自身の障害の診断を受けるまでの経緯をお話しいただけますか。

 ADHDに関しては、小学校5年生のときから担任の先生に可能性について指摘されていました。物忘れが極端に多かったからです。でも当時は、発達障害の傾向はあっても「障害」として正式に診断を受けていないグレーゾーンの状態でした。そのため、自分の体調にはあまり関心がなく、大学卒業まで特に通院などはしませんでした。

編集部 卒業後は就職をしたのですか?

A はい。新卒で小売店に就職し、接客の仕事をしていました。その際に、いくつかの違和感を覚えました。例えば、やるべき商品発注を忘れたり、大事な作業をすっかり忘れたり、自分が使った覚えのない備品の使用記録があったり……。継続してはたらくことができず、規模の小さな小売店に転職しました。

転職先の店舗はアーケード街にあったため、音がこもって響きます。自分にはどうやら音に敏感な特性があって、雑音が気になると、周囲の音に過剰に気を取られてしまい、指示が理解できず電話も対応できませんでした。また、説明を受けても頭に入らない状況がありました。気になってインターネットで調べると、どうやら自分は発達障害に当てはまる可能性がありそうで、小学校時代のエピソードも思い出されました。

編集部 可能性に気づいてから、職場に相談したり通院したりしましたか?

 当時の上司に相談したのですが、「言い訳にしかならない」と言われてしまいました。そのため、これはもう退職するしかないな、と。それを機に通院を始め、ADHDの診断を受けました。2020年の5月です。そして同年の12月1日に精神障害者手帳を取得しました。それまで「自分はおかしいのではないか」と常に思っていましたが、ミスが多いのは自分の怠慢ではなく病気が影響しているのだと分かり、安心することができました。

入社から現在まで、「出社したくない」と思った日は1日もない

編集部 手帳を取得してから、当社に入社するまでの経緯を教えてください。

A ハローワークからの紹介で、パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業所「ミラトレ尼崎」に通所することになりました。それまで就労移行支援事業所の存在も、特例子会社の存在も知りませんでしたが、通所を始めてから特例子会社ではたらくことに興味を持つようになりました。それでいろいろと調べるうちに、「パーソルダイバースではたらくのもいいな」と思い始め、会社見学に行きました。その時オフィスではたらく社員の笑顔が印象的で、何より、静かな環境が自分の特性でもはたらけるとイメージできたんです。

編集部 パーソルダイバースに入社してみて、職場環境や雰囲気はイメージ通りでしたか?

 はい。静かな環境、上司からの「焦らなくていい」という声掛け、明確なマニュアル、何をすればよいか明確に分かる環境。これらの要素が自分にぴったり合っていると感じています。

事務の仕事は未経験でしたが、パーソルダイバースの業務には明確なマニュアルがあり、定型的な作業で手順を教えてくれるので、頭の中が整理されスムーズにこなすことができました。前職の接客の仕事は、日々の業務が予測不能な状況なので、それでミスが多かったのだと思います。気分の波もなくなり、とても穏やかな心で仕事に取り組めるようになりました。入社して1年半以上経ちますが、出勤したくないと思った日は1日もありません。

今は充実した日々を実感。同じ思いを抱える人の力になりたい!

編集部 Aさんはサブリーダーとして、さまざまな業務を抱えながらもしっかり活躍されています。発達障害の方はマルチタスクが苦手な人もいると言われますが、Aさんにはそのような特性はないのでしょうか。

Aさん 複数のことが同時進行すると、やはりいつもよりミスが増えてしまい、とても戸惑います。でも、上司がうまく整理してくれるおかげで、結果的にマルチタスクをこなしているように見えるのかもしれませんね(笑)。

仕事をうまく進めるコツとして、上司からは「最初に業務を細分化して、ひとつずつ覚えていきましょう」と教えていただきました。実際に細分化してみると、業務を段階的に理解できるようになります。そのほかにも、メンバーとの面談方法、面談記録の入力、報告の仕方を覚え、さらにメンバーの業務量の管理の仕方、割り振りの仕方なども学びました。一つの業務の1~10までを習得したら次の業務に進むという手順で、じっくり一歩ずつ覚えていきました。

編集部 社内の別の事業部で、研修講師も務めていますね。それはどういったものですか?

Mさん 私が講師を務める研修は「精神・発達障害の人たちとのはたらき方」を伝えるものです。自分自身のことを多くの方に知ってもらい、それにより障害についての理解を広げることは、私がやりたいと思っていたことです。だから辛さを感じることなく取り組むことができています。

研修講師の仕事は月に1~2回で、事前に「この日は参加できますか?」と必ずスケジュールを尋ねてくれますし、参加できないときは正直に「できません」と伝えられます。そんな環境も、とてもやりやすいです。

編集部 最後に、今の仕事のやりがいや、読んでいる方へのメッセージをお願いします。

 上司と相談しながら、自分の意思を反映させた業務ができるので、本当にありがたい環境だと感じています。今回インタビューを受けたのも、こんなに安心してはたらいている自分がいることを、多くの人に知ってもらいたかったからなんです。自分と同じ経験を抱えながら仕事を探している人には、ぜひ当社を推薦したいですね。そして自分と同じ気持ちを味わってほしいです。

今後はリーダーとしてさらに成長し、責任感のある大きな仕事にも挑戦していきたいです。そして今と同じようにやりがいを感じながら、ここで長くはたらきたいと考えています。

2021年10月に入社し、今春サブリーダーに着任したAさん。日々充実してはたらいている様子を笑顔で語ってくれる姿は、まさに「はたらいて、笑おう。」というグループビジョンそのものです。Aさんのような人を一人でも多く増やしていくために、何が必要か。実際にはたらく当事者の声を通じて、そのヒントを今後も伝えていきたいと思うインタビューになりました。