パーソルではたらく障害のある社員が、障害についてや職場での工夫、はたらく想いについて語ります。
ASD(広汎性発達障害)のあるE.Yさんは、昔からちょっとした雑談や “察する” コミュニケーションが苦手で、仕事にも苦労。転職をきっかけに病院を受診し、自分が障害であることが分かります。診断を受けて一度はこれからの将来を悲観したものの、障害者手帳を取得し「はたらくこと・社会に関わること」に再び挑戦。自分の障害を受け入れたことで、新しい環境と可能性に出会いました。
※本記事は2022年9月に実施したインタビューをもとに執筆しています。
※ASD(広汎性発達障害)について:2013年にアメリカ精神医学会より公表された精神疾患の診断・統計マニュアル「DSM-5」では、広汎性発達障害は診断名ではなく“分類上の概念”として記載され、自閉症やアスペルガー障害、特定不能の広範性障害は“診断名“を「自閉スペクトラム症」(ASD)として定義されました。
一方、WHOが公表している国際疾病分類「ICD-10」では、ICD-10ではASDの診断名を「PDD(広汎性発達障害)」と扱っていました。
このように、国際的な診断基準の違いや、日本の行政・医療において準拠している基準に違いがあることから、広汎性発達障害が診断名として用いられ、そのまま残っているケースがあります。そのため、この記事では、E.Yさんが診断を受けた当時の情報として「広汎性発達障害」という診断名も併記しています。

パーソルダイバース株式会社 E.Y
受託サービス第1本部
PRO受託事業部 ビジネスサポート第3グループ
事務サポートチーム
2011年入社/広汎性発達障害
新卒の会社で適応障害、うつ、自律神経失調症を発症し退職
3歳くらいのとき、言葉の遅れから軽度の自閉症と診断されました。得意・不得意の差が大きく、学校では臨機応変な対応や雑談がうまくできず、人間関係や進学に苦労することが多かったです。
新卒でIT系の会社に入社しましたが、暗黙のルールや上司からの曖昧な業務指示を理解するのに苦しみました。それに加えて、食事を取る暇もないほどの激務の毎日。だんだん電車での通勤に息苦しさを感じ、適応障害やうつ、自律神経失調症などを発症して1年で退職しました。
2社目もIT系の会社で事務職をしていましたが、ある日突然「来なくていい」と言われてしまいとてもショックを受けました。その後、金融系企業に転職してからは睡眠障害も出てきて……。こうした経験から、はたらくモチベーションがどんどん低くなっていきました。
発達障害のテレビをきっかけに受診。ASD(広汎性発達障害)と診断
ある日、アスペルガー症候群に関する番組を見て「これは私のことじゃないか?」と思いました。それで、当時通院していた睡眠外来の先生の紹介で発達障害外来を受診したところ、「広汎性発達障害」との診断を受けたのです。
単語の理解や普段の会話なら問題はないけれど、曖昧な言葉や難しい言葉を理解するのが苦手で、環境変化に対する弱さもある。これがうまくいかない原因だと納得したと同時に、「自分は他の人と同じような人生を歩めないのか……」と一時はひどく落ち込んだことを覚えています。
就職:障害者手帳を取得。面接でのあたたかい雰囲気からパーソルへ入社。
診断を受けてから、自分にできることや特性を把握するために支援機関に通いました。そこで私のサポートを熱心にしてくれるスタッフさんと出会い、その期待に応えたいとの思いから、障害者手帳を取得して再度はたらくことを決心。パソコンのスキルを取得するため、また退職後に昼夜逆転してしまった生活を元に戻すため、専門学校にも通い始めました。就職活動に苦戦していたある日、支援機関の方に「ここを受けてみないかと」紹介されたのが、インテリジェンスベネフィクス(現:パーソルダイバース)でした

面接であたたかい雰囲気を感じ、「自分を受け入れてくれる、一緒にはたらいていける」と思い2011年3月に入社しました。はじめは簡単なアンケート入力作業からスタートし、現在の主な業務は派遣登録した方のデータ入力や、グループ内の求人サイトの記事修正を担当しています。また、中途入社者の業務指導も担っています。
職場での工夫:心を落ち着かせ、迷ったら上長に相談
入社当時は周囲の方の行動や環境の変化に驚き、戸惑ってしまうことも多々ありました。でも周りのメンバーとのコミュニケーションや上司のアドバイスをもとに、少しずつ感情のコントロールができるようになりました。今でも慌てて不安な気持ちになることがありますが、環境に影響を受けないよう、自分を落ち着かせ、常に冷静に自分を保つよう心がけています。

コロナ禍でリモートワークが増えてからは、今までと異なるコミュニケーション方法がメインになりました。Skypeやteamsを使うことが多く、最初はその環境に慣れずに、疲れてしまうこともありました。自分で対応しきれず判断に迷ってしまうときは、リーダーやサブリーダーに相談して一緒に課題を解決するようにしています。
仕事におけるASDの特性と強み・弱み
ASDの特性
ここで改めて、ASD(自閉スペクトラム症)について考えてみたいと思います。特性のひとつは「情報の受け取り方や処理の仕方のスタイルが独特である」ということです。仕事の場面では、言葉の裏にある「暗黙の了解」を読み取ることが難しかったり、決まった手順やルールを強く好んだりといった傾向として現れます。
まずは自分自身の特性が、仕事のどの場面で「やりづらさ」や「心地よさ」として現れるのかを客観的に見つめることが、自分らしいキャリアを築くためのスタート地点になります。
ASDの強み
仕事におけるASDの方の強みは「集中力」と「正確性」にあります。興味のある分野に対しては、周囲が驚くほど深く専門的な知識を蓄積し、細部まで妥協のない丁寧な仕事を行うことができます。
また、論理的な思考に優れているため、感情に流されず、事実に基づいた誠実な判断を下せる点も大きな武器です。マニュアルやルールを遵守する力も非常に高く、整合性が求められる業務や品質管理などの分野では、組織にとって欠かせない「信頼の要」として活躍している方が多くいます。
ASDの弱み
一方で、特性が「弱み」として現れやすいのは、マニュアル化されていない「曖昧な状況」です。複数の指示が重なるマルチタスクや、急な予定変更が必要な場面では、優先順位がつけられずパニックになってしまうこともあります。
また、冗談や比喩を文字通りに受け取ってしまい、対人関係で誤解が生じることも少なくありません。「情報の受け取り方を変える工夫」や「周囲の配慮」によって解消できる課題です。弱みを隠すのではなく、どう補うかを考える視点が大切です。
ASDの特性がある人が就いている仕事例
ASDの特性を活かせる仕事には、共通して「ルールが明確」かつ「専門性を深められる」という特徴があります。代表的なものとして、プログラマーやシステムエンジニアといったIT技術職、データの入力・管理、経理・会計事務、図書館の司書、工場での品質検査などが挙げられます。これらの職種は、手順が論理的に決まっており、一人で集中して作業する時間が確保しやすいため、ASDの方の「正確性」や「深い集中力」が最大限に発揮されます。最近では、その分析力を活かしてマーケティングや研究職で活躍される方も増えています。
ASDの特性がある人に起こりやすいことと対策方法
人とのコミュニケーションに関する苦手
職場で「指示が分かりにくい」「意図が伝わらない」と感じる場合、コミュニケーションを「視覚化」することが有効な対策です。口頭だけの指示は記憶が抜け落ちやすいため、メモやメール、チャットツールを使って必ず「文字」で残してもらうようお願いしましょう。また、「適当に」「いい感じに」といった曖昧な表現に困ったときは、「5分後までに終わらせるということで合っていますか?」と具体的な数字や条件を提示して、こちらから確認を繰り返すことで、お互いの認識のズレを防ぐことができます。
臨機応変な対応が苦手
急なトラブルやスケジュールの変更に弱いと感じるなら、「もしもの時のためのA・Bパターン」を事前に準備しておくのがおすすめです。例えば、「システムが止まったら上司に報告し、その間は事務作業をする」といった代替案をリスト化しておくだけで、脳のパニックを抑えられます。また、自分のキャパシティの8割程度で予定を組むよう意識し、意図的に「何もしない予備の時間」を作っておくことも効果的です。見通しを立てるためのツールを活用し、脳への負荷を分散させる仕組みを整えましょう。
感覚が過敏・鈍麻で作業の妨げになる
オフィスの話し声や電話の音、蛍光灯の明るさなどが気になり、仕事に集中できないという悩みもよく伺います。これは「感覚過敏」という特性によるもので、決してわがままではありません。対策としては、ノイズキャンセリングイヤホンや耳栓の使用、PCのブルーライトカット設定、パーテーションの設置などを検討してみてください。職場に相談する際は「自分のパフォーマンスを維持するための環境整備」として、具体的な解決策をセットにして提案することがポイントです。
これから:障害があっても仕事を通じて、はたらく可能性をひろげたい
ありのままの自分が受け入れられ、他の人たちと一緒にはたらけること。そして、仕事を通じて自分のできることが増え、はたらき方の可能性が広がったときに喜びを感じます。
できることが増えると、自分に自信が持てるようになり、可能性や選択肢、そして世界が広がります。想像できない自分が見つかることもあり、それがけっこう楽しいです。

今は社会人としての基礎の見直しをしている最中です。具体的には、報・連・相の文章を簡潔にすることや、チーム課題の資料をよりシンプルで分かりやすくまとめるなどです。自分の仕事について、人から感想やフィードバックがもらえるとよりやりがいや自信を実感できるので、今後は社外のお客様からの声をもっと聞いてみたいですね。
最近は社内研修の担当を務めることがあり、定型業務以外の新しい業務にも楽しみを見出しています。「他にもできることがあるかも」と、これからも自分の可能性を模索していきたいです。
今は社会人としての基礎の見直しをしている最中です。具体的には、報・連・相の文章を簡潔にすることや、チーム課題の資料をよりシンプルで分かりやすくまとめるなどです。自分の仕事について、人から感想やフィードバックがもらえるとよりやりがいや自信を実感できるので、今後は社外のお客様からの声をもっと聞いてみたいですね。
最近は社内研修の担当を務めることがあり、定型業務以外の新しい業務にも楽しみを見出しています。「他にもできることがあるかも」と、これからも自分の可能性を模索していきたいです。


