パーソルグループの特例子会社であるパーソルダイバースではたらく、登嶋由紀さんと高橋幸代さんは、はたらきながら、家族の介護や世話をする「ビジネスケアラー」の当事者として、日々奮闘しています。子供のケアを第一に考えたときに、仕事探しが困難だったという2人は今、ビジネスケアラーが抱える課題を解決しようと、さまざまな努力を続けています。2人を支える原動力は何か。また、どんな世界の実現を目指すのか。2人の思いをお届けします。

ビジネスケアラーは増加傾向。経済損失額は9兆円との試算も

ビジネスケアラーとは、仕事をしながら家族の介護に従事すること。介護に関しては高齢者ばかりでなく、障害がある家族のケアも含まれます。特に超高齢化社会である日本においては、ビジネスケアラーの数は右肩上がりで、2030年時点では約318万人にのぼり、経済損失額は9兆円との試算もあります。そもそも少子化などの影響で労働人口が激減するなか、家族のケアではたらけない。そうなるとさらに労働人口や生産性が低下する・・・人材不足やはたらき方の多様化が叫ばれる今、避けて通れない社会問題になりつつあります。

パーソルグループには、ビジネスケアラーとしてはたらく社員がたくさんいます。今回は、障害のある当事者の子供を持つ母である登嶋由紀さんと、自身も精神障害の当事者としてフルリモートで勤務する高橋幸代さんにお話を伺いました。「はたらき方が変われば、自分の力が発揮できる」「家庭の事情ではたらくことをあきらめたくない」。それぞれの思いを紹介します。

登嶋 由紀

パーソルダイバース株式会社
人材ソリューション統括本部 人材ソリューション本部 人材紹介事業部  東日本RA第2グループ

パーソルキャリアに入社後、法人営業や人事を経験。一度転職し、HR関連の新規事業などに携わる。自身の子供に発達障害があることが分かり、「ビジネスケアラーに関わる仕事がしたい」と2023年4月にパーソルダイバースに入社。現在は、法人営業として企業の障害者雇用推進に携わっている。

高橋 幸代

パーソルダイバース株式会社
雇用開発統括本部
雇用開発本部 雇用開発部 雇用開発グループ

国家公務員として20年間勤務。様々な理由から、時間と場所に縛られずはたらきたいと考え、その後フリーランスで、ライティングやWebデザインを独学で学び、プロジェクトマネジャーなどを経験。2022年10月にパーソルダイバースに入社。現在は、就労移行支援機関向けのオンラインセミナーやワークショップの運営、新たな障害者の雇用・就労モデルの開発に従事。

ビジネスケアラーとして制約に縛られず、自己実現できる世の中にしたい

編集部 まずは、お二人の仕事内容を改めて教えてください。

高橋さん パーソルダイバース 雇用開発本部 雇用開発部に所属し、新たな障害者雇用の領域や業務の発展に取り組んでいます。2024年度からは完全在宅かつ短時間勤務の雇用に向け、会社説明会など、他部署との連携プロジェクトを行っています。それまでは、国家公務員として20年間勤務し、自身や家族など様々な理由から、時間と場所に縛られずはたらきたいと考え退職しました。その後フリーランスで、ライティングやWebデザインを独学で学び、プロジェクトマネジャーなどを経験しています。

登嶋さん 私は新卒でパーソルキャリアの前身、インテリジェンスに入社しました。そこで法人営業や、個人のお客様に仕事や会社の相談をするキャリアドバイザー、また求人広告の営業などをしていました。その後縁あって転職。HR関連の新規事業などに携わっていました。いまは法人営業を担当しています。

編集部 お二人はパーソルが実施している新規事業起案プロジェクトに、有志とともに「ビジネスケアラーへの転職支援事業」を起案されました。プロジェクトに参加した理由や想いを教えてください。

高橋さん 10年ほど前から、2人の子供が不登校になり外に出ることができなくなり、自分のうつ病ではたらくことが難しい状況でした。でも、これまで業務経験やスキルはあります。「決まった時間に決まった場所に行けない」というだけではたらけない。そんな現実に「誰にも起こりうることなのに」というやるせなさを抱いていました。自分の経験を活かして何とかできないだろうか。そんなことを考えていました。

登嶋さん 私には発達障害の子供がいます。診察や入学、通院などで同じような境遇のお母さんに会ってきました。父親はほとんどいなくて、おそらくですが時短などではたらいているであろう「お母さん」ばっかりだったんです。子供は通級といって通常の教育課程に加え、個別的な特別支援教育を受けられる制度を利用していました。これは週に1回午前中の休みが必要なものでした。仕事が忙しくなるにつれて通級を辞めざるを得ませんでした。そのとき、当時の通級の先生が「私たちはこのサービスを利用できないんですよね」という一言が印象的でした。公的サービスであり公的施設を利用するので、土日の利用ができないので、この制度を使えない人がいます。そのとき「これは民間がやるべきことじゃないか」「民間企業が競争力をもってやることで、もっと柔軟なサービスを提供できて、いろんな人がはたらく機会を得られるのでは」と思って、パーソルダイバースで「ビジネスケアラー」関する仕事をしたいと思い入社しました。

当事者の子供を持つ母としての立場から参画した登嶋さん。当事者の母として、そして自身も精神障害の当事者としてフルリモートで勤務する傍ら、プロジェクトに挑む高橋さん。「はたらき方が変われば、自分の力が発揮できる」「家庭の事情ではたらくことをあきらめたくない」。二人はそれぞれの思いを持ってプロジェクトを進めました。

障害がある子供を持った親でも、はたらく選択肢を増やしたい

編集部 ありがとうございます。お2人はビジネスケアラーの当事者として、パーソルダイバースで成し遂げたいことを教えてください。

高橋さん 病気や障害、家族の介護など、いろんな理由ではたらくことに制約があっても、はたらきたい人がはたらき、活躍できる。はたらく選択肢の多様化と、地方での展開を実現することで、はたらくことを諦めなくていい。と感じてもらえるきっかけを作りたいです。そしてさまざまな背景を持った人が、それぞれの制約に縛られることなく、自己実現できる世の中になれば、と思っています。す。

登嶋さん 自分にとって目指すゴールは「人生の状況に合わせて前向きに選択できるための選択肢を増やすこと」です。パーソルグループにはさまざまな会社があり、パーソルダイバースは障害者雇用において大きな強みがあります。それぞれの会社が強みを活かして、はたらくための選択肢を増やしたいと思います。これはいま、ビジネスケアラーとしてたいへんな思いをしている人、また私の子供のように障害を持った人、すべての人に選択肢を増やすことです。

社会問題として、少しずつ認知されつつあるビジネスケアラー問題。「はらたいて、笑おう。」をビジョンに掲げるパーソルグループとして、そして「障害者雇用を成功させる。そして、その先へ。」の実現を目指すパーソルダイバースとして、この問題は解決すべき問題として認識しています。