パーソルグループで障害者雇用に取り組む特例子会社パーソルダイバースでは、重度障害のある方のはたらく機会創出を目指し、フルリモートワークかつ短時間勤務が可能な障害のある方の採用に取り組んでいます。この記事では、この取り組みから入社し、活躍している社員を紹介します。
前職の通勤途中、突然の脊髄出血で下半身不随となった古郡ひとみさん。自らの障害と向き合い、1年間のリハビリを経てフルリモートではたらいています。古郡さんに、障害のことや「はたらく」への想い、これからの挑戦について伺いました。
古郡 ひとみ
パーソルダイバース株式会社
受託サービス第1本部 staffing受託第2事業部
オーダーサポート第4グループ 業務サポート第1チーム
ある日突然下半身が動かなくなり、重度障害者になった
編集部 改めて受傷経緯を教えてください。
古郡さん 2023年の1月、当時は栃木県内の小学校の教員だったのですが、出勤途中に脊髄出血(障害名:脊髄損傷)で救急搬送し、そこから8か月の入院生活でした。前兆はまるでなくて、ほんとに突然のことでしたね。通勤途中にいきなり、腰が痛いな、と気づいたとたんに激痛が走り、腰と足がしびれて、「これは脳の影響かもしれない」と思いました。たまたま一緒に通勤していた主人のおかげで迅速に病院に行くことができました。
教員の前は12~3年間、警察官をしていました。高校や大学時代に剣道をしていて体力には自信があったのですが……。警察官は夜間や宿直勤務も多いですし、事件などがあれば不規則な生活になります。結婚・出産を機に、警察官から小学校の教員になりました。
警察官と教員、それまで仕事は私の生きがいでした。それがある日、一瞬の出来事で、おへそから下が動かなくなって、自分の未来が消えてしまったような感覚でした。また、倒れた翌日が長女の大学受験の日でした。自分の世界から光がなくなった感覚でした。幸い大学には合格したのがとても励みになったことを覚えています。
「もう一度はたらく生きがいを手に入れる」障害者の自分を客観視して理解する
8か月間の入院中、はげみになったのは、小学生の教え子たちです。覚えたてのひらがなで色紙などで応援してくれました。そのとき、自分は一人じゃなくて、応援してくれている人たちがいる。支えてくれる家族がいる、ということに気づき、またやりがいを見つけたい、自分自身をはたらける状態にしたい、そのためにはリハビリをやらないといけないとある意味、自分に火が付いたようにやる気が出てきたんです。
下半身不随となったいま、自分は歩けない。長時間はたらくことができない。では、なにがやれるのか。まずはやれる条件を整理しようと思いました。自分の障害特性を客観的に、そして徹底的に理解するように努めました。いま、現状は何をどれだけできるのか。今後、努力すれば何ができるようになるのか。徹底的に自分を見つめ直しました。
例えば、自分はおへそから下が動かないけれど、両腕、上肢は動きます。下半身が動かない分、上肢を鍛えないといけない。また、体のバランスと取るために体幹を鍛えないといけない。その2つから、ずっと続けていた剣道の素振りなど、2時間の自主トレをやることにしました。
また、自分は自分だけで排せつができないので、長時間はたらけません。はたらけて3時間程度です。さまざまな条件から午後のみはたらける職場を探しました。そういう条件を洗い出してケアマネージャーさんに相談したら「まだ、はたらくのは早いです」と言われました。でも、自分は初めての障害者になるのだから、「障害者がいつはたらき始めるのがベストか」などは分かりません。「もう一回、はたらく生きがいを手に入れる」と自分の気持ちに火が付いてしまったので止めようがありませんでした。
時短勤務、フルリモートではたらける仕事を探してパーソルダイバースへ
編集部 どうやって仕事を探したんですか?また、入社を決めた理由を教えてください。
古郡さん ハローワークで探しました。求人票を100社くらい見たのですが、ほとんどがフルタイムばっかりで、短時間勤務かつフルリモートではたらける会社は3社だけ。そのうちの1社がパーソルダイバースでした。
2024年6月にパーソルダイバースに入社しました。入社を決めたのは「はたらいて、笑おう。」という言葉が刺さったからです。私は下半身不随になってから、笑うことを忘れていたんです。障害者になって、「これから自分の楽しいイベントはもうないんだ」「健常者より下になってしまったんだ」と思った時もありましたが、でもそれは上とか下ではなくて、「自分が納得できるような人生を送りたい」という思いを実現させるかどうかだな、と思ったんです。
「なんでこうなってしまったんだろう」という思いも正直あります。でも、それ以上にいまの仕事は楽しいです。
「仕事が楽しい」秘訣は“できること”で挑戦するマインド
編集部 今の仕事や、はたらくうえで心がけていることを教えてください。
古郡さん パーソルダイバースでは、仕事を探している人の求人票というデータを作る仕事を担当しています。教員や警察官と違って、ある意味単純な入力業務です。でも、それが楽しいんです。
なぜなら私は、私の求人票を誰かが作ってくれたおかげで、会社に入って、また笑うことができました。それと同じことをしている、誰かの笑顔を作っていると思うと、笑顔のバトンを渡しているようで、とても楽しいし、やりがいを感じるんです。
もう一つ、自分が頑張れる理由があります。4年前に息子が大きな病気を患いました。入院生活中に、薬の影響で髪の毛が抜けながらも、勉強をやめませんでした。そんな状態でも教科書を開いて読んでいる。毎日見舞いに通うたび、その光景を見せられていました。障害者になってからそのことを思い出すんです。息子はできることを一生懸命にやっていた。自分はできないことにフォーカスしていたけれど、「はたらけるところでチャレンジしたい」とマインドをチェンジすることができました。できることに目が向くようになり、息子が頑張ったように、自分も母親としての責任を果たしたいと思うようになったんです。いまの自分、どんな自分だって、自分の一部なんだ。まだパソコンが使えるじゃない。できることを一つでも多く集めて、障害と共存しながら、昨日の自分より1ミリでも前に進もうと思えるようになったんです。
■上長に聞く古郡さん「無理なく就業。欠かせない存在に」
「古郡さんは脊髄損傷という重度障害を受傷されてから約1年強という異例の速さで求職活動に臨み、フルリモート・短時間勤務制度の1期生として見事活躍されています。入社後も自身の体調面を考えて、毎日2時間以上も自主トレを行っているようです。そうして、現在の自分に必要なケアを行ったうえで、無理のない就業を行っています。チームの雰囲気・風土形成に大きく貢献していますね」
大切なのは「昨日よりも1ミリでも前に進む」という思い
編集部 今後、チャレンジしたいことはありますか?
古郡さん まだまだ自分には可能性はあると思っているので、やれることを増やしたいです。できることであればなんでも。家事でも仕事でも。そして同時に、同じような障害を持った方に、こんな素敵な会社があると広めたいです。
パーソルダイバースは自分に合ったはたらき方ができるし、健康面や長期就労について相談できる制度もあります。一人ひとりを大切にしてくれる会社に出会えたと思っています。最初は不安がありましたが、思い切って飛び込むことが大事ですし、精一杯努力したおかげで、チャレンジできるという喜びを感じました。また生きがいを見つけられた。もう一回自分を認められた、そんな思いにあふれています。
おわりに
前職の通勤途中、突然の脊髄出血に襲われ、下半身が動かない車いす生活を余儀なくされた古郡さんを支えたのは「もう一回、はたらくやりがいを手にしたい」という強い思いでした。障害者となった自分自身を客観的に見つめ、自分にできることを精一杯努力する。そんな想いでチャレンジしたことで、はたらく喜びを取り戻すことができたと語っています。
終始笑顔で、そして力強くはきはきと語る古郡さんが印象的でした。在宅勤務・時短勤務ではたらくのはあくまでも手段かもしれません。はたらくことにどんな目的やゴールを見出すのか?はたらいて笑うためには?そういった目的を力強く持ち続けることが必要かもしれません。
■【お知らせ】パーソルダイバース「フルリモートかつ短時間勤務ではたらく制度について
「障害者雇用を成功させる。そして、その先へ」をミッションに掲げるパーソルダイバースでは、2024年4月より、フルリモートワークかつ短時間勤務が可能な障害のある方の採用に取り組んでいます。
2024年4月に施行された改正障害者雇用促進法では、多様な特性やワークスタイルの希望に対応し、短時間就労が可能な障害者の雇用機会を拡大する内容が盛り込まれました。パーソルダイバースでは、障害のある方の多様な「はたらき方」に応えるというこの制度の趣旨に賛同し、今後3年間で120名の採用を目指しています。
古郡さんのエピソードから興味を持っていただけた方はぜひ、パーソルダイバースの採用サイトをご覧ください。