パーソルグループの特例子会社であるパーソルダイバースで統合失調症と向き合いながらはたらく斉間健一さんは、2014年の入社以来、長く休職することもなく、安定就労を続けています。入社後さまざまな職種にチャレンジし、キャリアを積み重ねている斉間さんに、長期就労のための工夫や障害との向き合い方、はたらく想いを伺いました。

パーソルダイバース株式会社

受託サービス企画推進本部 人財開発部
人財開発グループ 定着支援第1チーム
斉間健一

【10年勤務の秘訣】体調を整えることから始まったキャリア

編集部:斉間さん、2024年で勤続10年を迎えられたと聞きました。長くはたらき続けられた理由を教えてください。

斉間:私は2003年に統合失調症を発症し、いまでも通院や服薬が欠かせません。半年に1回ほど、何の前触れもなく突然、幻聴が聞こえるなどの症状があります。それでも統合失調症と付き合いながらはたらいています。

長くはたらくためには「まずは体調を整えること」が何よりも大事だと感じています。調子がいいと仕事にも集中できますし、成果が出れば「社会の一員として生きている」という実感が湧いてきます。
そうして少しずつ自信を積み重ね、気づけばあっという間に10年が経っていました。私にとって、長期就労のスタート地点は「自分のコンディションと向き合うこと」でした。

ポイント1:自分に合った体調管理の方法を見つけることが、安定就労の第一歩

【発症から再就職まで】統合失調症を受け入れて前に進むまでの道のり

編集部:斉間さんが統合失調症になったきっかけや、症状を教えてください。

斉間:大学卒業後、金融系の会社に新卒で入社した直後に発症しました。上司や研修講師からの指示がバラバラで混乱し、何を信じていいのかわからなくなりました。やがて、自分の声が頭の中で聞こえるようになったんです。統合失調症の典型的な症状である幻聴や意欲の低下などが続き、最終的に退職せざるを得ませんでした。

退職後は自宅で療養しながらアルバイトをしていました。でも、「正社員としてもう一度はたらきたい」という想いが強く、就労移行支援事業所に通うことを決意しました。
友人に「障害者手帳を取ればはたらく選択肢が増えるよ」と言われたことが大きな転機になったんですね。それで手帳を取得し、2014年に現在のパーソルダイバースに入社しました。

編集部:なぜ、正社員を目指したのでしょうか?

斉間:一言で言えば「自分で生きていくため」です。私は実家暮らしで、住む場所こそ親の世話になっていますが、日々の生活や自分の時間の過ごし方は、親は親、自分は自分と思っていて、自分がやりたいことのために親にお金を貰うのはちょっと違うかなと思っています。「はたらいてお金をもらい、そのお金で自分のやりたいことをすることによって、生きている実感や、生きていくための時間を得られるんだ」という考え方があったんですね。だからこそ、正社員として社会復帰するんだと思っていました。

自分にとって生きていくうえで最適な環境やはたらき方、制度として、いまの会社に障害者雇用ではたらくことを選びました。

★ポイント2:自分で生きていくために、障害者雇用制度や支援機関を活用する

【キャリアアップの工夫】異動経験で広がった視野と自信

編集部:入社後は、複数の部署でご活躍されています。異動を希望された理由は何ですか?

斉間:パーソルではたらく中で、「この仕事は世の中の役に立っているな」と実感できる場面がたくさんありました。それが、はたらく楽しさやりがいにつながり、「別の部署ではどんな貢献ができるんだろう?」と興味が湧いたんです。

異動すると業務内容も人間関係も変わりますが、自分の視野が広がります。また、新しい経験から学ぶことも多く「自分はどこでもはたらけるかもしれない」という自信がつきました。最初は仕事を覚えたり、人間関係を作るなど大変なことはありますが、それ以上に得られることがあります。部署を超えて貢献できることが、キャリアの広がりにもつながっていますね。

★ポイント3:異動や新しい業務にチャレンジすることで、キャリアに厚みが出る

【障害と向き合う工夫】少しでもポジティブに捉えることで、人生が前向きに動き出す

編集部:長期就労に向けて、コンディションを整えること以外に大事にしていることはありますか?

斉間:私が一番大事にしているのは、「ポジティブに考えること」です。

ポジティブな考え方をしていると、その考え方に引っ張られて人生も前向きになれると思うんです。

障害を受傷したからこそ、こうして社会に貢献できている。それも前向きにとらえるようにしています。たとえば難しい仕事をお願いされたとき、それを辛いと思うよりそれを辛いと思うより「これは成長のチャンスだ」と思えるようになると、不思議と気持ちが変わってくるんですよね。

私も、統合失調症になってから不安や挫折を経験してきました。でも、障害を受傷したことで、自分自身の生き方を見つめなおし、安定してはたらける会社で10年間仕事を続けることができました。今では自分の経験をもとに社内外で研修講師としても活動しています。障害を受傷したことも前向きに考えられるようになったんですね。

だからこそ、こう伝えたいです。
「私でもできたのだから、きっとあなたにもできます。」と。
一緒に、自分らしいはたらき方を見つけていきましょう。

★ポイント4:障害による不安や挫折もポジティブに捉え、自分の価値を信じる

【まとめ】斉間さんに学ぶ、精神障害のある方の長期就労・キャリアアップのヒント

終始笑顔で話す斉間さん。インタビュー中、ネガティブな言葉が出てくることは一度もありませんでした。
斉間さんが10年間はたらき続け、キャリアアップできたポイントをまとめました。

★1. 自分に合った体調管理で「はたらく土台」をつくる
コンディションを整えるなど、自分にとってぴったりの心身の安定方法を見つける

★2. 自分で生きていくために、障害者雇用制度や支援機関を活用し
体調管理や配慮をもとに、無理せず、安定してはたらき続けられる制度を利用する

★3. 異動・新業務で自信とスキルを育てる
新しい仕事への不安はあっても、挑戦することではたらく楽しさやりがいにつながる

★4. 障害による不安や挫折もポジティブに捉え、自分の価値を信じる
目の前の出来事にネガティブにならず、その先にあるポジティブな結果を意識する

このインタビューが、同じような不安や悩みを抱える方にとって、一歩踏み出す勇気になれば幸いです。