「障害があると、はたらくのは難しいのではないか」「生きがいを持てる未来はあるのだろうか」
そんな不安を抱える障害者の方にこそ、知ってほしい生き方があります。
視覚障害を抱えながら、企業ではたらき、パラスポーツ・パラクライミング日本代表として世界に挑戦する河村さん。
彼の言葉には、「障害があっても、自分らしくはたらき、生きがいを持つ」ためのヒントが詰まっています。

パーソルエクセルHRパートナーズ株式会社

システムテクノロジー本部
ハードウェア事業部
CXデザインセンター

河村 拓海

視覚障害「もう治らない」という辛さから、「生きがい」に出会うまで

編集部:河村さんの障害について教えてください。

河村さん:障害名は緑内障です。右眼は失明していて、左眼は視野狭窄で、視力は残っています。診断されたのは11歳のときです。ただ、その後は大きな症状も出ずに、大学時代までサッカーやフットサルを楽しんでいました。ところが、大学3年生の頃から急激に視野が狭くなり、数カ月で競技を続けることが難しくなりました。

「これはもう治らないな」と感じ、できることが減っていくことがとても辛かったことを覚えています。当時、視覚障害者支援施設を訪ねてできるスポーツを探し、ブラインドマラソンとパラクライミングを紹介していただきました。そのとき「自分でもできることはありますか?」と尋ねたら、施設の方に「何でもできるよ」と言われたことが衝撃的でした。そして、今思えば、自分の生きがいにもなる、パラクライミングにここで出会いました。

「できない」から「できるかもしれない」の発想が大きな転機に

編集部:2020年新卒採用で入社 障害者手帳申請中で一般枠での採用だったそうですね。

河村さん:大阪の大学で電子情報通信を学び、2020年新卒採用で入社しました。最初はエンジニア職に就いていましたが、目の症状が進行して、「できる仕事」にシフトしました。現在の仕事は主に、部内の品質マネジメントシステムと情報セキュリティの推進担当をしています。仕事が変わっていくことは、ある意味仕方ないと思っていましたし、パラクライミングも始めることによって、「できない」ではなく「できるかもしれない」と思えたことが、自分の支えというか、大きな転機になったと感じています。仕事も、「できるかもしれないな」と思うことでチャレンジする気持ちが芽生え、マニュアル作成なども行っています。

編集部:パラスポーツ、パラクライミングが河村さんの支えになったんですね。競技について少し教えてください。

河村さん:パラクライミングは、障害のある人が参加するスポーツクライミング競技です。競技では、高さ15メートルほどの壁をロープなどで安全確保しながら、選手は壁に設定されたルートを登り、登ることができた高さを競います。視覚障害や身体障害など、障害によってクラス分けがされています。

視覚障害クラスでは、サイトガイドと呼ばれるパートナーが後ろから声でルートを伝えてくれます。登れなかったときに「次はどうするか」を考え続ける競技なので、自然とメンタルが鍛えられました。

日本代表に選ばれ、自分に自信がつき世界が広がった

写真の銅メダルは2025年11月の国内大会のメダル

編集部:競技を始めて4年余りで日本代表入り。すごいスピードですね。

河村さん:きっと、負けず嫌いだったのが良かったんだと思います。大会に出て負けると悔しくて。それでトレーニングを積んで練習して、「今度は負けたくない」という気持ちで試合に臨んでいました。そうしたら少しずつ結果がついてきました。

初めての全国大会出場は2022年。年に2回国内で全国大会があります。そして代表に選ばれたら年に3~4回の国際大会があります。大会で結果を残すことができ、日本代表に選ばれて、すごく嬉しかったです。平日は基本的に8時間勤務をし、仕事終わりにクライミングジムに。仕事の休みと合わせて、週3回ほどクライミングジムでトレーニングしています。おかげさまで昨年9月の韓国での世界選手権では男子B3クラスで4位、10月のフランスでのワールドカップでは5位、11月の国内大会では銅メダルを獲ることができました。

編集部:世界4位と5位。すごいですね。パラクライミングを始めて、周囲やご自身に変化はありましたか?

河村さん:日本代表になったことで一番変わったのは競技に対してもそうですが、自分自身に対して自信がついたことが一番の変化です。日本代表になったことで遠征も増えて、会社に休みなどの配慮をいただくようになりました。同僚や上司にも「頑張って!」「行ってらっしゃい!」と声をかけてくれることが格段に増えました。

多くの人に期待されることになるので、「そのぶん、会社に恩返しをしないと」「休んでいる間の業務をしっかり取り返さないと」と考えるようになり、自然と仕事にも力が入るようになりました。競技に出会ったことにより、世界が広がっていく。挑戦したいという気持ちが高まっていく、そんな感覚です。

「生きがい」を得ることが仕事と生きることの原動力になる

編集部:競技の経験が、仕事に生きていると感じることはありますか。

河村さん:はい、それはもちろん。挑戦して、失敗して、改善するという流れは、競技も仕事もまったく同じだと思っています。世界レベルの選手と同じ環境で競うことで、「自分も社会の中で価値を発揮できる」という実感を持てるようになりました。パラクライミングという競技は自分の生きがいであり、生きがいを見つけることが、自分を前に進める原動力になるんだな、と感じます。簡単なことではないかもしれませんが、「これをずっと続けたい」「自分を支えるものはこれだ」というものが見つかれば、自分と自分の人生に自信がでてくるのではないでしょうか。

まとめ:障害があっても、仕事や趣味など「挑戦していい場所」はある

河村さんのチャレンジは、視覚障害に限らず、さまざまな障害と向き合っている方に、勇気とヒントをくれるのではないでしょうか。河村さんがパラスポーツに出会ったように、誰にでも、仕事や趣味など「挑戦していい場所」は必ずあります。

河村さんの姿は、自分らしく社会とつながり、生きがいを持って生きていける方法を教えてくれるようでした。