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ともにはたらく環境づくり

パーソルグループ「ミラトレ」での職業準備性サポート【前半】

Interview

パーソルグループ「ミラトレ 」

自分を受け入れ、素直になる。
それが職業準備性を高めるカギ。
【前半】

パーソルグループの就労移行支援「ミラトレ」では、一般企業での就職を目指すさまざまな方に向け、はたらくための能力や知識を身につけるトレーニングと支援を提供しています。そこで重視しているのが、「職業準備性」と呼ばれる就労に向けた基礎能力を身につけること。具体的にどういったプログラムを行っているのか、ミラトレ大井町 センター長の谷澤がご紹介します。

谷澤 幸子
Profile

谷澤 幸子

パーソルチャレンジ株式会社
ミラトレ大井町 センター長

2012年パーソルチャレンジに入社。
これまで6か所の就労移行支援事業所を経験し、300名を超える方々を支援。事業所での支援業務のほかに、100社を超える企業への訪問や、事業所の新規立ち上げなども担当。役職にとらわれず、就労移行支援に関する業務なら何でも幅広く挑戦している。

その人のペースに合わせ職業準備性を身につける支援を

ミラトレ大井町では現在31名のご利用者が在籍し、毎日20名ほどが事業所に通われています。ご利用中の方々の中には、障害者手帳を持っている方だけでなく、就職がうまく行かずクリニックに通って初めて就労移行支援を知った方などもいらっしゃいます。いずれの方々にも、見学に来られたらまず「職業準備性を整えていきましょう」とお話しします。
職業準備性とは、具体的に言うと、はたらくうえで必要とされる「健康管理」「日常生活管理」「対人技能」「基本労働習慣」「職業適性」の5つの要素が整った状態のことです(下図参照)。私たちが提供しているプログラムは、基本的にこの職業準備性をもとに構成されています。

ミラトレでは、最初の面談で一人ひとりのご希望や状況を確認し、個別の目標を設定して具体的な支援計画を考えていきます。もしピラミッドの要素以前の課題があると判断したら、自立訓練サービスなどをご案内することもありますね。就労移行支援の利用には2年という期限があるので、はたらく準備が十分に整う前に期限が来てしまってはもったいないので。
ただ、実際に入所して支援が始まってからは、「今はピラミッドのここまでクリアできている」といった確認はやり過ぎないようにしています。それを意識するあまり、ご利用者にストレスがかかってしまうケースがあったからです。でも基本的な考えとして、職業準備性の大切さはすべてのご利用中の方々に理解していただいています。

体調管理もコミュニケーションも「自己理解」が第一歩

私たちが職業準備性の中でも特に重視しているのは、ピラミッドの土台部分、「健康管理」「日常生活管理」「対人技能」です。特に「健康管理」と「日常生活管理」が身についていないと、就職できても定着が難しいです。精神障害のある方は昼夜逆転の生活をされている方もとても多いので、まずは朝起きる習慣をつけ、週3日から通所を始めます。徐々に通所日数を増やし、生活リズムが整ってきたという実感を得ながら生活を立て直すことが大切なのです。ちなみに大井町では、3カ月間の出席率が95%に達したら就活を始められるようにしています。この目標値を導入してから、欠席率が激減しました。

障害者採用において、企業が求めるのは「自分のことをよくわかっていて、必要な配慮事項を自分から伝えられる人」です。ここからもわかるように、職業準備性を整えていく中で「自己理解」は非常に重要なキーワードになります。それができるかどうかは障害種別による差もありますが、それ以上に、個人のプライドや育った環境によるところが大きいもの。私でさえ自分と向き合うのはなかなか大変なので、これは障害の有無に関係なく難しいことかもしれませんね。
自己理解を高めるために、ミラトレでは週に1回メンタルケア講座を受講していただき、自分の考え方のクセや他人の気持ちを理解しようとするトレーニングを行います。これも日常生活管理と同じように、どこかでパッとできるようになるというより、プログラムを続ける中で徐々に理解していく、という方がほとんどです。

「擬似就労」を通じはたらくことに慣れていく

午前中は講座などの座学、個人やグループワークが中心ですが、午後は「擬似就労」を通じたトレーニングを行います。人事部、総務部、企画広報部など各自の配属を決め、会議をしたり議事録を取ったりと、実際の業務さながらの仕事をしてもらいます。報連相がどれだけできるか、協調性があるかなど、対人能力がとてもよく分かりますね。
また擬似就労では、川崎市が提供している就労定着プログラム「K-STEP」のセルフケアシートも活用します。これは、自分の体調や気分を毎日記録するための簡単なチェックシートで、一般企業の就労現場でも使われるものです。これにより体調が悪化した時にどんなことがあったのか、可視化しながら振り返ることができます。

擬似就労を始めて、早い方なら3ヶ月ほどで就活を始められます。現在は新型コロナウィルス感染拡大の影響で少し時間がかかっていますが、就活を始めるまでの平均期間は5〜6ヶ月ほど。ただ、内定が決まれば、私たちの支援が終わるわけではありません。後半では、就職後の定着支援や、私たち支援員が大切にしていることなどをお話したいと思います。

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