ともにはたらく環境づくり
パーソルグループ「ミラトレ 」
一般企業での就職を目指すさまざまな方に向け、職業準備性を整えるためのトレーニングと支援を提供しているパーソルグループの就労移行支援「ミラトレ」。前半では、職業準備性の具体的な内容や、ご利用中の方々が実際にミラトレで行うトレーニングについてご紹介しました。後半では、就職した後の定着支援や、支援をする側の心構えについて、引き続きミラトレ大井町のセンター長、谷澤がお話しします。
谷澤 幸子
パーソルチャレンジ株式会社
ミラトレ大井町 センター長
2012年パーソルチャレンジに入社。
これまで6か所の就労移行支援事業所を経験し、300名を超える方々を支援。事業所での支援業務のほかに、100社を超える企業への訪問や、事業所の新規立ち上げなども担当。役職にとらわれず、就労移行支援に関する業務なら何でも幅広く挑戦している。
就労移行支援のゴールは内定をもらうことではなく、職場に定着し、はたらき続けていくことです。そのためご利用者がミラトレを経て就職した場合、最初の6カ月間は「定着支援」を行います。6カ月間を過ぎても支援を希望される場合は、最長3年間ご利用いただける「就労定着支援サービス」も受けることができ、実は多くの方がこのサービスをご利用されています。
定着支援では就職先のご担当者さまとも面談をし、ご本人からは直接伝えづらい要望を企業側へお伝えしたり、企業側からご家族へのご連絡事項などを代わりにお聞きしたりすることも。私たちが付いていることは、企業側からしてもメリットが多く、「就労移行支援に通っている方の履歴書から優先的に見ていく」という企業のご担当者さまもよくいらっしゃいます。
就職が決まる方は、もちろん職業準備性がある程度整った段階の方ですし、私たちも自信を持って職場へと送り出します。それでも就労現場に出れば、予期せぬさまざまな壁にぶつかるもの。
ときにはご本人の準備が足らず失敗してしまうこともありますが、その場合は「講座でも同じことができていなかったよね」「会社はこう言っているけれど、あなたは違う捉え方をしているのでは?」と、少し厳しめの指摘もします。通所期間中に築いた信頼関係があるからこそ言えることですね。またご本人も、就職できたことで心に余裕が生まれるのか、素直に意見を聞き入れてくれます。
定着支援については、こちらのインタビューもご覧ください。
→しながわネットTV「就職後の様子を見てみよう ~就労定着支援~」
前半では、職業準備性を整えるにはまず「自己理解」を、というお話をしましたが、はたらけるようになるために何が一番大切かと聞かれたら、私は「素直になれるか」に尽きると思います。
「自分はちゃんとできる、配慮事項はいらない」とおっしゃる方に限って、多くの配慮が必要な場合がよくあります。逆に「税金を使って支援を受けるのは申し訳ない」と恐縮される方もいらっしゃいますが、いずれの場合もお話をよく聞くと、根底には「自分は障害者じゃない」というプライドがあったり、障害を理由にした甘えが隠れていたり。特に大人になってから発達障害に気付いた方や、後天的な障害のある方にその傾向が強く、はたらく準備が整うまでに時間がかかる場合が多いですね。
私たちは医師ではないので医学的な診断はできませんが、支援を行う中では、障害を原因としたご家族との確執や過去の出来事、前職で仕事を任せてもらえなかった経験など、素直になれない原因としてたくさんのことが見えてきます。
そうしたお話を深くお聞きしながら、これは配慮が必要なのか、それともご本人の我儘なのか、あるいは就労移行支援以外のサポートが必要かなど、支援側がしっかり見極めてくことも重要です。
支援員の育成においては、どういった言葉を掛けたらよいかといった具体的なノウハウも必要ですが、それ以上に支援に対するマインドを重視しています。福祉視点が強すぎると、何でもやってあげよう、守ってあげようという考えになり、ご本人の自立に結び付かないことがよく生じます。
例えば、表計算ソフトの使い方を聞かれたとき、使い方を直接教えるのか、使い方を調べる方法を教えるのかの違いです。前者をしてくれる支援員のほうがご利用者からは頼られますが、もし次に分からないことが生じても、ご本人が一人で解決できません。就労移行支援は福祉サービスですが、目的はあくまで「本人の自立」。それはすべてのスタッフに強く伝えています。
具体的な育成の取り組みとしては、各自で毎日支援の記録を取り、それを朝礼・終礼時にみんなで共有して意見を出し合います。これを続けることで、支援員の目的意識やマインドが揃ってきました。
また、これまで私ひとりで対応していた見学時の個別面談も、最近は支援員に引き継ぐことができてきました。ご利用者の中にはなかなか自分の話をしたがらない方もいらっしゃいますが、どういったマインドを持って、どう耳を傾けていけばいいのか、支援員とともに学んでいきたいと考えます。