パーソルグループの特例子会社であるパーソルダイバースでは1,000名以上の精神、発達障害のある社員が活躍しています。このコラムでは、パーソルダイバースの職場で社員たちを支えるジョブコーチの視点から、精神、発達障害のある方が安心してはたらくためのヒントやノウハウを紹介します。

第1回目となる今回は、精神障害のある社員が入社時に抱く不安の解消方法について、職場で実践している支援の工夫を紹介します。

はじめに:パーソルダイバースの障害者雇用現場の特徴

はじめに、パーソルダイバースの障害者雇用現場の特徴についてご紹介します。

パーソルダイバースではたらく障害のある社員のうちの2/3が、精神障害者保健福祉手帳を持つ精神、発達障害のある社員です。うつ病や統合失調症、ASDやADHDなど、多様な特性を持つ社員が不安を抱えず、安心して活躍できる職場づくりに取り組んでおり、就業一年以上の職場定着率は9割以上を維持しています。
主な特徴として、次の2つがあげられます。

すべての業務を標準化

一つ目の特徴は、業務の”標準化””見える化”を徹底していることです。
障害のある社員たちはパーソルグループ各社から受託した事務業務(PC入力作業、封入封函などの軽作業、求人広告制作、人事・経理業務など)に従事しています。そのすべての作業内容を分解、細分化したうえで、業務フローとマニュアルを整備し標準化しています。こうすることで、「判断基準が曖昧で仕事の判断ができない」「複雑な条件分岐のある作業は苦手」という人でも、苦手な部分で苦しんだり、不安を抱えることなく仕事に取り組むことができます。

障害のある社員の不安をなくす支援体制

もう一つの特徴は、はたらく社員に対して、不安を抱えないように支援体制を整えていることです。
パーソルダイバースでは、配属部署の上司による支援に加えて、配属部署の枠組みを超えた定着支援担当者による支援を実施しています。ジョブコーチをはじめとする定着支援担当者は、社員との面談を通じて悩みを整理し、勤怠安定のための適切な支援を実施しています。悩みの内容に応じて、社内対応や支援機関との連携、通院の促しなど柔軟にサポートしています。

社外の意見交換会では、精神障害者の雇用に対する不安が根強く、「そんなに精神に障害がある社員が多くて大丈夫ですか?」「休みや欠勤が多くて業務が回らないのでは?」といった声もあります。しかし、パーソルダイバースでは”ちょっとした配慮”があれば共にはたらくことが可能だと考えています。

それでは、職場で実践している”ちょっとした配慮”の一例を紹介しましょう。

精神障害者の入社直後の不安…どう対処する?

パーソルダイバースの職場では、毎月のようにたくさんの社員が入社してきます。入社直後は、仕事に慣れていただくよう、OJTで数種類の業務をみんな一緒に学びます。そのOJTの期間中に「他人との比較」で悩む人が少なくありません。

  • 「タイピング速度が他の人より遅い…」
  • 「Excelスキルが不足しているのではないか…」
  • 「業務の手順書が理解できず自分だけ何度も質問してしまう…」

精神障害のある社員の中には、周囲の同期社員と自分を比べ、できていないことに強い不安を感じる人がいます。「このままやっていけるのだろうか」と将来を心配し、帰宅後にメンタルが不安定になる。その結果、翌日から遅刻・早退が始まってしまう……なんてことがあるのです。

そんな不安を抱え、相談してくる社員に対して私たち定着支援担当がはじめに行うこと、それは「その悩みをしっかり受け止める」ということです。
具体的に、どのように受け止めているのでしょうか?

「悩みを受け取る」パーソルダイバースの支援実例

他人と比較する社員の悩みを受け取るために、定着支援担当はこんな風に会話をします。

  • 「それは比べちゃいますよねえ」
  • 「そうですか…タイピングが遅いんですね。それは気になりますよねぇ…」
  • 「手順書の内容がわからないと仕事に支障があるので、何度も確認してしまいますよね…」

いきなり「他人と比べても仕方ないです」とか「あなたはあなたの良さがあるので、悩まなくても大丈夫!」
なんてことは言いません。

人間誰しも他人と比べてしまうもの。「比較するな」と言ってもそれは無理。特に精神障害の方は、自分に対して自信がなくなっているので、どうしても自分の弱いところに目が向いて悩んでしまいます。
だからこそ、まずは悩みを受け取る。そのうえで、その人の強みに目を向けてもらうように問いかけます。

例えばタイピングが遅いけれど、人とのコミュニケーションが得意な社員がいるとします。こうした社員には
「●●さんは確かにタイピングの練習はもっと必要かも。でも、あなたは接客経験があるから、人との接し方が上手い! 質問のタイミングや表情などは誰よりも優れていますよ」
という感じですね。

自分の強みに気づき、自信を取り戻してもらう。そうしてやりがいや成長を実感できれば、職場定着にもつながります。

まとめ:「他人と比較しない」強みに目を向け成長を促す

それでは今回の記事のまとめです。

【入社直後、他人と比べて悩んでしまう社員へのポイント】

  • 「比べるのはやめよう」と、簡単に言うのはやめましょう。
  • その人の悩みをしっかり受け取めてから、強みに目を向けるようコミュニケーションしましょう。

精神障害のある方は、つの悩みから発展して自分のすべてを否定する傾向が少なくありません。そのため、全否定からメンタルダウンという流れを止めるためにも、「強みに気づいてもらう」ということは有効だと考えています。

障害者雇用では、強みを活かしてはたらける環境づくりが不可欠です。それぞれの得意分野を尊重し、互いの弱みを補い合う環境ができれば、はたらきやすく、一人ひとりが力を発揮できる職場になります。精神障害のある方が抱える悩みを受け止め、強みに気付ける支援を続けることで、みんなが日々のやりがいを見つけ、成長できる。そんな職場づくりを目指して、これからも取り組んでいきたいと思っています。

このコラムでは、障害者雇用現場での取り組みや奮闘の日々を少しずつ紹介していきますのでお楽しみに!
withでは他にも、パーソルではたらく障害のある社員が、障害や仕事への想いを紹介するインタビューや、「障害者×はたらく」に関するイベントなどを紹介しています。あわせてご覧ください。