
はたらくことは、収入を得るだけでなく、社会とのつながりや自己成長につながる大切な機会です。一方で、精神・発達障害のある方にとっては、長期休暇や季節の変わり目、組織変更などが大きなストレスとなり、心身のバランスを崩すきっかけになることがあります。
本記事では、パーソルグループの特例子会社・パーソルダイバースではたらく社員の実例をもとに、「長く安定してはたらくための心の整え方」をご紹介します。
メンタルが崩れやすいのはどんなタイミング?

パーソルダイバースでは、2026年4月1日時点で3,153名が在籍し、そのうち障害のある社員は2,223名。身体障害256名、知的障害529名、精神・発達障害1,438名と、精神・発達障害のある社員が大きな割合を占めています。こうした環境だからこそ、「精神・発達障害のある社員が安定してはたらき続ける工夫」に関する多くの知見が蓄積されています。
また、パーソルダイバースでは定期的な面談や突発的な相談内容などをデータベースに蓄積しているので、多くの「実例」とその「対処方法」といったノウハウを持っています。
その中で見えてきたのが、ゴールデンウイーク、お盆休み、年末年始などの長期休暇明け、また異動や組織変更などの新年度前後に調子を崩す社員が多くなる、という事実です。
一般的には「休めば元気になる」と考えられがちですが、精神・発達障害のある方の中には、休暇によって生活リズムが乱れたり、人との接点が減ったりすることで、かえって不調につながるケースがあります。
4月の新年度や人事異動、組織変更、業務変更の時期とその前後の月も調子を崩す社員が目立ちます。多くの当事者が感じているのは、「大きな変化そのもの」は当然ですが、「先が見えない不安」の小さな積み重ねです。
新年度からゴールデンウイーク明けにかけては、休み明けに出勤できるか、忘れている業務はないか、仕事の内容が変わるかもしれない、新しい上司になった、仲が良い同僚と席が離れた…。こうした小さな変化が立て続けに積み重なることで、疲労や不安が強まることがあります。
だからこそ大切なのは、「自分はどのタイミングで調子を崩しやすいのか」を知ること。そして、体調を崩す前兆を見逃さずに、早めに対応することです。
「調子を崩す前提」で準備するはたらき方

精神・発達障害のある社員には、「絶対に体調を崩さない方法」「不安なくはたらく方法」を探していた時期があったという人も少なくありません。しかし、特例子会社の現場で、当事者社員と10年以上面談や相談に乗ってきた身としては、長く安定してはたらいている人ほど、少し考え方が違うと感じることが多いです。
それは、「いつか調子は崩れるもの」と考えていることです。「心身の体調は崩れるもの。だからこそ予防し、体調不良になったときに何をするか」を考えておく。そういう先回りの準備をする社員ほど、長く安定してはたらけていると実感する場面も少なくありません。
実際にはたらいているうちに、「体調管理が上手になったというより、不調との付き合い方が上手になった」という声を聞くことがあります。
例えば、毎日10点満点で体調を記録する社員がいます。8点以上なら通常運転、6点なら無理をしない、4点以下なら相談を検討するというように、自分なりの基準を持っています。
また別の社員は、長期休暇の最終日に出社する準備を始めます。通勤経路を確認する、翌日の服を準備する、小さな行動を先に済ませることで、「休みモード」から「仕事モード」へ少しずつ切り替えているそうです。こうした方法は特別なスキルではありません。
セルフマネジメントやセルフケアと呼ばれるものですが、本質は「早めに変化に気づくこと」です。
大切なのは完璧を目指すことではなく、自分自身のサインを見逃さないことです。コロナ禍で在宅勤務が続くときに「朝になったら身支度を整え、通勤時と同じ服装をして、リュックの中にパソコンを入れて仕事部屋に移動していました。椅子に座ったら会社のネックストラップをかけて業務を開始しました。そうすると切り替えができて落ち着くことができました」と話してくれた社員がいたのは特に印象的でした。
パーソルダイバース社員が実践する心の整え方

心を整える、はたらく準備をするうえでよく聞かれるのが、「生活リズムを守ること」です。睡眠時間、起床時間、食事時間を大きく変えない。特に長期休暇中でも平日との差を少なくすることで、休暇明けの負担を軽減している人が多くいます。
次に多いのが、「言語化する習慣」です。不安やストレスを頭の中だけで抱えると、漠然と大きく感じてしまいます。そこで、ノートやスマートフォンのメモアプリに、
- 不安なときに身の回りに何が起きたのか
- 何が気になっているのか
- 直近1週間など、期間を決めて、その間に変わったことはないか
などを書き出します。
すると、不調時に起きた出来事や原因を客観的に振り返ることができて、「仕事が嫌なのではなく、急な変更が不安だった」「人間関係ではなく疲労が原因だった」と整理できる場合があります。
また、ビジネスの分野でも取り入れられているマインドフルネスに近い実践として、散歩や軽い運動を取り入れる社員もいます。昼休みに10分だけ歩く、階段を使う、帰宅後にストレッチをする。
こうした小さな習慣が、結果として集中力や睡眠の質の向上につながることがあります。特に寝る前にストレッチをすると眠れるようになった、という社員が複数いました。
「一人で抱え込まない」ことも重要です。とはいえ、自分から気軽に相談するのは難しいものです。
パーソルダイバースでは例えば月に1回、上司と面談をする。また、定期的に外部の支援機関と社内の支援担当者を交えて面談を行うなど、「話し合う場」を会社が設定しています。それにより、自分の状態を関係者に共有することができていますし、面談内容を記録することで「この時期は不調傾向になりやすい」「業務上不安に感じる傾向が見える」など、関係者が共通言語で対策を相談することができます。
そして何より、定期的に面談・相談を行うことで、困ってから相談するのではなく、「まだ大丈夫だけれど少し気になっています」という段階で伝えることが、結果的に安定就労につながっています。
安定してはたらき続けるために大切なこと

精神・発達障害のある方がはたらくうえで重要なのは「強い人になること」ではありません。むしろ、自分の特徴を理解し、自分に合った対処法を持つことです。
パーソルダイバースには、就職したばかりの頃は週5日の勤務が難しかった社員や、人とのコミュニケーションに強い苦手意識を持っていた社員もいます。それでも、自分なりの心の整え方を見つけ、周囲と協力しながらはたらき続けている人がたくさんいます。
「自分なりの睡眠までのルーティンを見つけ、眠れるようになった社員」「不安から声が出なかったけれど、業務で成功体験を重ねることで円滑に話せるようになった社員」「あえて行う家事を制限して、体力を温存することで勤怠安定につながった社員」。それぞれの方法で安定就労を実現している社員が数多くいます。繰り返しますが、不調になることは失敗ではありません。大切なのは、不調になったときに立ち戻れる場所や方法を見つけ、対応策を実践しておくことです。
もし今、はたらくことに不安を感じているなら、「不安があるからはたらけない」のではなく、「不安と付き合う方法を見つけながらはたらく」という選択肢があることを知ってほしいと思います。
あなたに合った心の整え方は、きっとあります。そして、それを見つけることが、長く自分らしくはたらくための第一歩になるのです。はたらくあなたを支える会社にきっと出会えるでしょう。

