パーソルグループの特例子会社であるパーソルダイバースは、高知県四万十町にもオフィスがあります。2021年4月に開設した「高知四万十オフィス」は、2023年10月現在で18名の社員がはたらいています。

四万十町窪川駅から車で約10分、四万十川本流から徒歩2分に位置し、窪川駅からの送迎サービスや条件付きで車通勤も可能です。主に、パーソルグループから委託されたパソコンを使った事務作業と、地元農家が栽培したニラの出荷補助作業を行っています。

Y.Mさんは2022年9月に入社し、近隣の黒潮町から列車と送迎を利用して、1時間かけて通勤しています。入社当初は人と接することが苦手だったYさんも、1年が経過すると、仕事を通じて成長とやりがいを実感していると話してくれました。180度変わった考え方を、改めて聞いてみました。

M.Y 

パーソルダイバース株式会社 受託サービス第1本部
PRO受託事業部 高知四万十グループ  

「自己受容」と「体調管理」がはたらくうえで必要かもしれません

編集部 現在の業務内容を詳しく教えてください。

Y 7月まではグループ企業の営業さんがもらってきた名刺をデータ化して、システムに入力する業務をしていました。現在、営業用データの調査を行っており、住所、ウェブサイト、業務内容に変更があった場合には、その情報をエクセルへ更新、記録する仕事に取り組んでいます。

編集部 ご自身の障害の診断を受けるまでの経緯をお話しいただけますか。

Y もともと、小さいときから何となくの自覚はありました。人の顔が覚えられないとか、会話がうまく続かないことがよくありました。大人になっても仕事や、やるべきことがなかなか覚えられないことがしばしば。それこそ母親から何百万回と注意されていました(笑)。

最初に通院したのは就職して1年後の2018年。そこで自閉症スペクトラム(ASD)の診断を受けました。翌年には障害者手帳を取得。二次障害こそなかったのですが、はたらくことや他人と接することがおっくうに感じ、好きだったイラストを仕事にできないか、または家でできることはないかと模索していました。家の外に出るのが怖くなったんです。

編集部 しばらくは家で静養だったんですね。その後に当社に入社したのですか?

Y 静養中に一度は就職しようと考え、面接に行ったことがありました。しかし、まったく話すことができませんでした。やっぱり知らない人との会話が難しいと感じました。家でできることを模索する日々が続きました。障害については母の理解もあり、一緒に「できることをやっていこう」と言ってくれて、焦らずに済みました。母は保育士で、障害がある子どものお世話をした経験もあり、あまり動じることもなかったようです。

編集部 家族の理解もあったんですね。自身でも工夫されたことはありましたか?

Y 自分は知らないことを調べるのが好きで、障害のこともずいぶん調べました。

改めて分かった自分の特性は、他人との会話が苦手なこと、突発的な状況になるとパニック状態になること。優先順位をつけることや、大人数の中にいることが苦手な一方で、一つひとつのことを丁寧にやることは得意であるということでした。

これらの特性をハローワークや、地域の障害者就業・生活支援センターに報告し、仕事を探している旨を相談していたところ、「パソコン操作はコツコツした入力作業で、人数もそれほど多くないですよ」とパーソルダイバースを紹介していただき入社することになりました。

編集部 自分の特性を把握し、しっかり伝えることができたことが、就職成功のカギだったわけですね。

Y そうですね。その点は、支援機関の方に褒められました。また、母に常々言われていたので、規則正しい生活を心がけていました。

同じ時間に起きて、同じ時間に寝る。当たり前のことですが、仕事がないときもそれができていたことは大きかったのかもしれません。おかげで、就職後に寝不足などで体調を崩すことはありませんでした。

ただ、面接は非常に緊張しました。何とか自分の思いを伝えられたかもしれないと思いながら、面接後にどっと疲れたのは記憶しています。今振り返ると、合格できた理由は「自己受容」と「体調管理」だったのかもしれません。

じっくり時間をかけて生まれる成果もあるんだ、と気づきました。

編集部 入社直後はスムーズでした?

Y しばらくの間は毎日緊張していました。気を張っていたと思います。人との会話が苦手だから気軽に相談できない。だから、教わったことを忘れないようにメモをしました。

「どうしても分からないときは勇気をもって聞くんだ」と自分に言い聞かせていました。
同時に、最初だからみんな緊張するもの。慣れが必要だし時間が解決してくれるかも、という開き直りもできていて、それがよかったのかもしれません。

編集部 入社前と後では、ご自身の印象は変わりました?

Y 以前は「早く結果を出さないといけないんだ」と焦っていたような気がします。小さなミスが多かったので、余計に焦っていたんだと思います。でも、当社は障害特性を受け入れてくれるので、ある程度は待ってくれるところもありますし、成果を出すまでのスパンが長い仕事や提案ができます。
入社して1年になりますが、気づいたことを上長に伝えて、それが実現したことも。

スピード重視の仕事もあれば、「成果はじっくり時間をかけて生まれるものもあるんだ」と気づきました。正解は一つじゃないこともある、と分かったおかげで、それまで下を向きがちだった自分が、前を向いて歩くようになり、はたらくことや生活することに自信がついた気がしています。

編集部 Yさんにとってのはたらく喜びを教えてください。

Y 人と接することが苦手な自分が言うのは矛盾しているのですが、仕事を通じて人との繋がりを感じ、社会との繋がりも実感できることが喜びです。

以前は自分と家族以外に目がいきませんでしたが、仕事をすると、それぞれの個人の考え方や人生に触れ、新たな発見があります。これにより、「自分はもっとこうなりたいな」と気づきを与えてくれて、成長することができます。それが、楽しいと感じます。

人と接するのは疲れるんですけどね(笑)。でも、誰かのためになりたいとか、この仕事の意味は何だろうとか、やりがいは何だろうとか、考え方が広がるのが楽しいし、考えられることに成長した実感を覚えます。

四万十オフィスはとても風通しがよくて、自分のペースではたらけていると実感します。ここにいたら、自分の人生はもっと充実できるかもしれないな、といまは思っています。

環境がすべてとは言いませんが、変えてくれるものもあると思っています。私にとっては得られるものがとっても多い職場です。四万十近辺で仕事を探している人にはお勧めです!