パーソルグループ特例子会社、パーソルダイバースの東北オフィスではたらくM.Mさん。大好きな接客の仕事でうつ病を発症後、自分の障害と向き合い、安心してはたらける環境を探してパーソルに入社しました。
入社当初は、人と接することが苦手で体調管理に悩み、4カ月後に休職したことも。しかし、自分の特性に合った工夫を重ねた結果、体調が安定し、同僚との食事や新人指導もできるように。
この記事では、M.Mさんの障害と向き合い方や仕事での工夫、入社から6年かけて得た安定感と自信の秘訣について紹介します。

※本記事は2023年10月に実施したインタビューをもとに執筆しています。

パーソルダイバース株式会社

受託サービス第1本部
PRO受託事業部 仙台グループ エージェンシービジネスチーム 
M.M

大好きな接客の仕事で、うつ病と睡眠障害を発症

編集部 障害の診断を受けるまでの経緯を教えてください。

私は2010年頃、新卒で入社した会社で障害を発症しました。
当時、アミューズメント系の店舗で接客を担当していました。先輩たちがとても親切な職場でしたが、職場の先輩たちは親切でしたが、昼勤・夜勤の勤務体制に慣れず、原因不明のメンタル不調が続きました。クリニックを受診すると「うつ」と診断され、数カ月の休職を経て退職しました。

振り返ってみると、私は「大きな音が苦手」という特性がありました。しかし、アミューズメント施設は常に大音量で、家に帰っても頭の中に音が響き、眠れない日々が続きました。体は疲れているのに眠れず、そのまま出勤を繰り返すうち、ある日突然会社に行けなくなったのです。

通勤途中、自転車を押して信号待ちをしているとき、「もう無理かもしれない」と感じ、その足でクリニックへ向かい休職が決まりました。3~4カ月休職しましたが、体調は戻らず退職を選びました。現在も睡眠障害が続いており、服薬しています。

退職後は岩手の実家に戻り、アルバイトを探していたときに震災が発生しました。心身ともに疲れ切り、「震災うつ」のような状態に。1年間療養し、その後地元役場の臨時職員として働きました。事務が主な業務で、やりたかった接客業とは異なりましたが、安定してはたらけたことで「事務のほうが向いているのかもしれない」と感じるほどでした。

「うつ病でも長くはたらきたい」障害者雇用枠という選択肢

M 2014年ごろ、少しずつ安定してきたことで、「もっと長くはたらきたい」と思うようになりました。そこで仙台に戻り、アウトレットの子供服売り場ではたらくことにしました。
大好きな接客業に戻れたものの、初日からうつ病の症状がひどく出てしまい、緊張や不安、焦りで眠れなくなりました。お客様と接するプレッシャーが大きく、結局すぐに退職。その後は数カ月間、動けない状態が続き、はたらく自信や勇気が持てなくなってしまいました。

編集部 障害者手帳を取得し、就労移行支援で訓練を受ける決断に至った経緯を教えてください。

M 「自分は無理だ。うつの人はどうやってはたらくのだろうか」と悩む中で、ネットで調べた結果、障害者手帳を取得し、就労移行支援を受けて障害者枠ではたらくという選択肢を知りました。正直、「障害」という言葉には戸惑いがありましたが、自分らしくはたらくためには必要だと考え、手帳を取得しました。これからの人生の助けになると信じての決断でしたね。

就労移行支援には1年間通いました。その中で、自分の特性と向き合い、「音に弱い」ということを自覚しました。さらに、憧れていた接客業が自分にとってストレスになっていることや、不意の会話や人との接触に緊張を感じる「対人恐怖症」であることもわかりました。
その一方で、訓練を通じて「仕事を介せば人と接することができる」と気づいたんです。たとえば事務仕事では、仕事を依頼する人がいて、その依頼に応えることで相手が喜んでくれる。この形なら自分にもできるかもしれないと思い、事務職を中心に探しました。そして2017年、パーソルダイバースに入社することができました。

「休むのも仕事」職場の上司の言葉に救われた

編集部 パーソルダイバースに入社してみて、最初はどのような様子でしたか?

M 入社前後はとても緊張していましたね。これまで1年以上続けてはたらけたことがなかったので、「また体調を崩してすぐ辞めてしまうのでは」と不安でいっぱいでした。
実際、入社して4カ月ほど経ったころ、体調が悪化して数カ月休職することになりました。誰にも調子が悪いと言えず、どんどん悪くなってしまったんです。会社に体調不良を伝えるのが怖くて、「辞めさせられるかもしれない」と思い、黙って無理をしていました。

編集部 休職中に、気持ちの変化はありましたか?

M はい、ありました。きっかけは上司の一言です。
「休んで体調を整えるのもあなたの仕事です」と言われたとき、「休むことは甘えではないんだ」と気づきました。さらに「待っているよ」とも言ってもらえて、本当に勇気づけられました。
安心して休んでいる中で、「この会社で自分は何を頑張ればいいんだろう」と考えるようになり、その考えがいまの安定につながっていると思います。

仕事に集中し、ポジティブに切り替えたら楽しくなった

編集部 安心してはたらくために、職場や仕事で工夫したことを教えてください。

M まず、会社では自分の仕事だけに集中することを心がけました。家に帰ったら好きなことをしてリフレッシュし、ネガティブな言葉はポジティブな表現に変えるようにしました。たとえば、「疲れた…」ではなく「今日はよく頑張ったな!」といった感じです。
そうするうちに、他人と比較しなくなり、自己肯定感が上がっていきました。「自分は頑張っているんだから、自信を持ってもいいんだ」と思えるようになったんです。

入社して4年間は時短勤務でしたが、その間に少しずついろいろな仕事を任せてもらえるようになりました。自信がつくと、自然と顔が上がり、周りが見えるようになってきました。業務もデータ入力だけでなく、マニュアルやチェックリスト作成など、業務の構築に関する仕事も任せてもらい、「仕事って面白いな」と感じるようになりました。これは自分でも驚きですね。

編集部 入社して、Mさん自身が変化していったんですね。

M はい、あれだけ苦手だった人との関わりもできるようになりました。人に教える機会も増えて、「この人にはどう伝えたらわかりやすいか」「ざっくりでも大丈夫かな」など、相手に合わせて工夫するようになりました。相手の考え方や温度感に寄り添う意識が持てるようになったんです。
今ははたらくことが楽しいですし、これからも自分自身がもっと強くなれると信じています。

自分の苦手を知り、はたらきやすさをつくる

編集部 今の仕事内容と、これからの目標を教えてください。

M 私は転職活動をしている方や転職担当者へのメールサポート業務を担当しています。お客様(転職希望者)の方から提出された書類の内容確認や、システムへのアップロードが主な業務です。イレギュラーな対応が多いですが、転職をサポートできるよう、日々取り組んでいます。

これからは、上司から「チャレンジしてほしい」と言われたら、いろいろなことに挑戦したいです。案を求められたときには積極的に意見を出し、自分の発言力を高めて仕事に貢献したいと考えています。
勤怠は安定してきましたが、心身の状態についてはまだまだだと思っているので、無理せず自分のペースで頑張りたいです。

編集部 勤怠を安定させて、長くはたらくために心がけていることはありますか?

M 自分の「苦手」を知り、それを相談することが大切だと思います。私の場合、休憩時間は他のメンバーとずらして一人で取るようにしています。静かな環境でリフレッシュすることが必要なので、チームにも理解してもらっています。席も窓際に配置してもらっているんです。
こうした工夫は、自分から相談しなければ実現しなかったことです。さまざまな経験を通じて「苦手」を理解し、率直に伝えたからこそ、いまの安定した環境があるのだと思います。

まとめ:Mさんに学ぶ、障害があっても安心してはたらく工夫

自身の障害や仕事上の工夫まで、率直に語ってくれたMさん。
Mさんの話から、障害との向き合い方や職場環境づくりのヒントが見えてきました。

  1. 自分に合った職種やはたらき方を見つける
    Mさんはもともと接客業に憧れていましたが、自分に合わないと気づき、事務職へ転換することで安定してはたらけるようになりました。無理せず、自分の特性に合った職場を見つけることが長期就労につながるのではないかと思います。
  2. 自分の「苦手」を知り、率直に相談する
    Mさんは自分の特性や弱点を理解し、それを職場に相談することで、はたらきやすい環境をつくることができました。静かな環境で休憩を取るために一人で休憩を取る工夫や、窓際の席を確保してもらうなど、自ら発信することでサポートが得られる。
  3. ネガティブな感情をポジティブな言葉に変換する
    Mさんは、「疲れた」と言う代わりに「今日はよく頑張った」と肯定的に表現することで、自己肯定感が高まった。また、他人と比較しない習慣が身につき、少しずつ自信が持てるようになり、心の安定が図れた、と話してくれました。ネガティブな感情に囚われないことも、心身の安定に必要と言えそうです。
  4. 上司や周囲の支えを受け入れ、無理をしない
    Mさんは上司からの「休んで体調を整えるのも仕事」という言葉が大きな支えとなり、休むことを受け入れられるようになりました。無理せず、自分のペースではたらくことが、心身の安定や長期就労に繋がるでしょう。

Mさんの工夫が、自分にあった職場やはたらき方を探している方、安心してはたらける職場環境づくりに取り組んでいる方へのヒントとなれば幸いです。
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