眠れない…それは「不安」だけが理由とは限りません

「最近、眠れない日が続いていて…」という相談は、職場でもよく耳にします。
たとえば、うつや統合失調症などの気分の不調を抱える社員は、将来を悲観したり、明日から始まる新しい仕事に不安を感じたりして、十分な睡眠がとれないことがたびたびあります。
気分の落ち込みや先の不安があると、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりしますよね。
ただ、眠れない理由が「気持ちだけ」ではないこともあります。私たちがよく出会うのは、発達障害の特性と相性の悪い生活の回し方が重なり、夜が「終われない」形になっているケースです。そこで鍵になるのが、本人の中にある「マイルール」と切り替えの難しさです。マイルールが強い人ほど、眠れない夜が増えやすいことがあります。
ここでは、すべての人に当てはまる話としてではなく、現場でよくあるパターンとして読んでみてください。「自分が弱いから」ではなく、「設計を少し変える余地があるかも」という視点を持てると、楽になります。
こだわりが強い人ほど夜更かししやすい理由
たとえば「家事が多くて寝るのが遅くなります」という方。詳しく聞くと、退勤後に買い物、夕食は主菜+汁物+小鉢まで整える。食後は洗濯を必ず回し、家計簿をつけ、趣味の更新も毎日欠かさない。
一見すると丁寧で規則正しいのですが、本人の中では「こうあるべき」が強く、少し崩れると落ち着かない。こだわりが強い人ほど、正解を探して「全部やり切る」ことで安心しようとします。その結果、就寝が後ろ倒しになり、眠れない状態が続きます。
ここで必要なのは、努力ではなくマイルールの緩和です。マイルールを否定するのではなく、ルールの「硬さ」を少し緩める。正解を一つに固定せず、「今日はここまでで十分」という「合格ライン」を増やすことです。マイルールの緩和が進むと、「夜の終わり」が作りやすくなります。
SNSは「全部見ないと終われない」になりやすい

最近増えているのがSNSの相談です。「気づいたら深夜。でも、見終わるまで眠れません」。フォロー数が多く、毎日「漏れなく確認すること」がルーティンになっている方もいます。興味のある話題はハッシュタグで追いかけ、納得するまでスクロールしてしまう…。
SNS自体が悪いのではなく、「やめ時」を決めにくい仕組みと、「納得するまで」「取りこぼしたくない」という特性が噛み合うと、眠れない夜が伸びやすくなります。ここでもマイルールの緩和が重要です。「全部見る」を守ろうとするほど、夜は終われなくなります。
さらに、日中に我慢が多い人ほど、夜に自分の時間を取り返したくなります。いわゆるリベンジ夜更かしです。「今日の分を取り返したい」という気持ちが、SNSの「全部見ないと終われない」と結びつくと、リベンジ夜更かしが加速し、結果として眠れない状態が長引きます。だからこそ、SNSのルールもマイルールの緩和の発想で組み直すことが効果的です。
リベンジ夜更かしを防ぐためのコツは「やめる」より「マイルールの緩和」
私たちが大事にしているのは、本人のマイルールを真正面から否定しないことです。「やめましょう」と言われるほど、反動でリベンジ夜更かしが強まったり、「守れない自分」を責めて眠れない悪循環になったりします。
そこで、マイルールの緩和として「少し緩い新ルール」を本人と一緒に作ります。ポイントは(1)具体的にする(2)数字や時間で明確にする(3)例外も決める、の3点です。リベンジ夜更かしが出やすい人ほど、「終わりが見える」設計が効いてきます。
(1)家事の新ルール例
- ご飯は週末にまとめて炊き、小分けして冷凍する
- おかずは「買う日」を週2回入れる(作らない日を予定に入れる)
- 洗濯は「容量が8割たまったら回す」
「毎日やる」をゼロにするのではなく、判断基準を置くイメージです。ここまでできたらOK、という「合格ライン」を増やすのがマイルールの緩和のコツです。家事が終わらないことで起きるリベンジ夜更かし(やっと自由時間…のはずが家事で潰れる)も、同時に減らしやすくなります。
(2)SNSの新ルール例
- 平日は「よく見る上位10アカウントだけ」と決める
- 残りは金曜・土曜のどちらかにまとめて見る
- もしくは「夜10時までに見終わる範囲だけ」と決める
「睡眠を確保しましょう」と言うだけでは難しいので、ここでも「上位10アカウント」「夜10時まで」のように、行動に落ちる形にします。
そしてもう一つ。新ルールは「守れなかった日」も織り込んでおくと続けられます。
例:守れなかったら翌日は「上位5アカウントだけ」に戻す/週末に調整する、など。
リベンジ夜更かしをゼロにするのではなく、暴走しない範囲に収める——この設計が現実的です。
就活・職場で役立つ:「発達障害のある社員への接し方」と「はたらきやすい会社」
求職中の方、支援者の方に向けて、発達障害のある社員への接し方として効果が出やすいのは、「曖昧さを減らし、合意したルールを見える化する」ことです。
たとえば、指示は「なるべく早く」ではなく「〇日〇時まで」。優先順位は3つまでに絞る。相談のタイミングを先に決める(週1回10分面談など)。この「枠」があると、本人も安心して力を出しやすくなります。
また、はたらきやすい会社の目安として、
- 仕事内容・評価基準が明確であること
- 予定変更が早めに共有されること
- 相談窓口や定期面談が仕組みとして用意されていること
- 配慮が運用として定着していること
こうした要素が揃っているかを見てみてください。職場の不確実さが減ると、帰宅後の切り替えも楽になり、リベンジ夜更かしや眠れない夜の頻度が下がりやすくなります。
就活では「苦手」だけでなく、「こうすると安定します」というマイルールの緩和の工夫(新ルール)とセットで伝えると、前向きに受け取られやすくなります。
眠れない夜を減らすために、今日からできること
眠れない状態が続くと、日中の集中や気分にも響きやすくなります。原因が発達障害の特性そのものというより、特性と生活習慣(SNS・家事・正解探し)が絡んで「夜が終われない」形になっていることもあります。
おすすめは、(1)自分のマイルールを書き出すこと、(2)少し緩い新ルールに置き換えること(=マイルールの緩和)、(3)数字・時間で決めること、(4)例外ルールも決めること、の4点です。
それでもつらさが強い場合や、日中の生活に支障が大きい場合、体調不良が続く場合は、医療機関や支援者に早めに相談してください。眠りは気持ちで何とかするより、生活を少し設計し直すことで変わることがあります。

