こだわりの強さから睡眠不足に

「毎晩、眠るのが遅くなってしまうのです」
「週末はつい夜更かしをしてリズムが崩れ、週の半ばにはどっと疲れてしまいます」

生活のリズムが崩れ睡眠不足になり、ひいては心身の調子を崩す。社員からはそんな相談がよく寄せられます。例えば、うつや統合失調症など気分障害の社員は、将来を悲観したり、明日から始まる新しい仕事に不安を感じたりして、十分な睡眠がとれないことがたびたびあります。

一方、“マイルール”が総じて強いと言われる発達障害の社員からは、別の理由で眠れないという相談がよくあります。

「家事が大変で毎晩寝る時間が遅くなるのです」と話す社員によくよく話を聞いてみると、18時に退社し、それからスーパーで買い物して、夕飯はご飯、お味噌汁、メインのおかずに小鉢も作る。食事が終わったら、毎日洗濯をして家計簿つけて、趣味のブログを毎日更新して……。なんとも「規則正しい生活」を送っています。とかく、「かくあらねばならない」と正解を求める傾向が強いのです。

「フォロワーチェックが終わるまで眠れない」

このところ特に増えてきた悩み・相談は、SNSについてです。当社でよくあるよく相談とその回答をご紹介します。くどいようですが、あくまでも当社でのお話です。

発達傾向の方によくある相談が「SNSを見ているとあっという間に夜中になってしまいます」というもの。ツイッター、フェイスブック、インスタグラム。この主だった3つのSNSの、興味がある人やイベントをすべてフォローしていて、毎日欠かさずチェックするのがルーティンになっている社員が何人かいます。ある社員に話を聞くと、各アカウントで100ずつフォローしていることも。それを全部見るまで眠らないって……夜が明けそうです。
ときにはフォローしているものだけでなく、音楽や映画、料理等、自分の好きな分野でハッシュタグ検索して、納得がいくまで見続ける日もあるとか。

新たなルールを決めて守ってもらう

こうした悩みに対して、私たちはその人のマイルールよりも少し緩めの“新ルール”を作るようにしています。

最初の「家事が大変で眠れない」という社員には、「ご飯は週末に炊いて、小分けして冷凍しましょう。おかず類はスーパーで買ってきてもいいんです。あなたが無理ない範囲でできる家事があなたにとっての正解です」と伝えています。洗濯に関しても「毎日洗濯すると、水道代がもったいないです。容量の8割くらいまで洗い物が溜まったら洗濯しましょう」といったように、具体的な数字を示します。

SNSのチェックが欠かせない社員には、「インスタもフェイスブックもツイッターも、自分が大事だと思うもの、よく見るものから上位10アカウントだけ平日に見て、残りは金曜と土曜に見ましょう」とアドバイスしています。睡眠時間にフォーカスするならば「夜10時までに見終わる範囲でチェックしましょう」という言い方でもいいと思います。
「睡眠時間を確保しましょう」とだけ言っても、その方法がはっきり分からないことがあるので、ここでも具体的な数や時間を示すのがポイントです。

発達障害の方はルールにとても厳格というか、真面目です。双方合意のもとでルールを作るとしっかりと守ってくれる、そんな印象があります。

ちなみに「インスタ映えする生活」に憧れ、自分と比較して悲観してしまうという相談は意外とありません。それは発達障害の社員しかり、精神障害の社員しかりです。
「いつもあんな生活をしているのではなく、一枚の写真を撮るために、相当の努力と苦労を重ねているみたいよ」と話すと、「でしょうねえ」とすんなり納得してくれます。虚構と現実を冷静に見極めているのかもしれません。見習いたいものです。