とある研修での質問から、あらためて気が付いたこと
現在、私、田町のジョブコーチは、社内外の研修講師をいくつか担当しています。対象とするのは、当社の新卒入社者や、運営する就労移行支援事業所のスタッフ、新しくリーダーに就任する社員など。外部企業の障害者雇用担当の方や、管理スタッフの方などに向けて行うこともあります。そんな中、研修である印象的な質問をいただきました。その質問とは、次のようなものです。
「パーソルダイバースでは、社員の特性に合わせて業務をお願いすると聞きました。特性が強い人や定例反復業務しかできない人ばかり入社してきたら、業務が足りなくなったりしませんか? ある一定の層だけが増えてマネジメントなどでたいへんになることはありませんか?」
当社は現在、精神・発達障害の社員が多く在籍していて、また毎月30名前後の社員が入社している状況が続いています。しかし、「ある一定の層の社員が増えてしまう」「業務の偏りが出てマネジメントに困っている」といったことはありません。質問に対し、私は次のように答えました。
「これは障害の有無に関わらずですが、入社して一定の年数が経てば社員は成長します。これまでできなかったことができるようになり、また自分なりの対処方法を見つけることによって、新しい領域へのチャレンジが可能になります。ですから、人材が一定の層で滞留することはありませんし、いまのところ質問のような状況で困ったことはないと思います」
「成長する」という発想が、なぜか抜け落ちている
私の答えに、質問された方はハッとしたように「自分には“手帳を持った社員が成長する”という当たり前の考え方が抜けていました。ありがとうございます」と返してくれました。
メディアを通じて知らされる精神・発達障害という存在は、決してポジティブなものだけではありません。はたらくよりもまず治療に専念しなければならない方や、辛い症状に悩まされている方たちの様子は、印象的な部分だけ恣意的にメディアで取り上げられることも多いでしょう(過去新聞記者だった経験から、そう感じることがあります)。なので、どうしても「成長」する「変わっていく」というイメージができないのかもしれないな、と思いました(あくまでも主観的な考えですが)。
当社で見られるメンバーの「成長する姿」
当社では、“メンバーの成長する姿”が当たり前のように見られます。
- かつては打ち合わせなどで意思疎通することが苦手だった方が、率先して後輩と打ち合わせをするようになった
- 数年前は担当件数が増えるとすぐキャパオーバーになって早退していたメンバーが、いまは非定型業務チームのリーダーをしている
- 契約社員からスタートして、正社員、リーダーと順調に昇格している
こんな事例が、本当にたくさんあるのです。うつやパニック障害の社員の中には、過去に多忙や職場の人間関係といった「仕事」が原因で体調を崩してしまった方も多いのですが、そうした方々が手帳を取得して当社ではたらくことで、再び「仕事」によって自信を取り戻しています。もちろん、服薬を含めた自己管理や自己認知など、本人の日々の努力があったうえですが、少なからず「仕事」が与える好影響はあるのでは、と感じています。
①安定的に業務を続けるなかで、自分なりの工夫や人間関係の構築を行い、自分の「守備範囲」を少しずつ広げていく
②そして当社におけるキャリアプランを描き、長期就労につなげていく
③長期就労がもたらす自信・安心が仕事の質を高め、パーソルグループにとってなくてはならない存在になる
こんな夢のようなサイクルが、当社でも回り始めているなと、冒頭にいただいた質問を思い出しながら考えました。
いま、私が所属する教育研修チームでは、社員それぞれが「成長したい・成長できる」と感じられるような研修を設計しています。昇格するだけが成長ではありません。与えられた業務を一人でやりきる、仕事の質を高めるといったことも、成長のひとつの姿。それぞれにとって「はたらいて笑える姿」を実現する研修を作り、さまざまな事例をこちらのコラムで紹介していきたいと思っています。
なかなか難しいチャレンジではあるのですが、日々変わっていく社員の姿を見ると「こっちも頑張らないといけないな」と励まされ、私もまた、ともに成長していると実感しています。