job coach

社員の悩みや課題に向き合う「田町のジョブコーチ」が、障害者雇用の日常やちょっと役立つノウハウを紹介する当コラム。今回は、支援を受ける社員と、支援する側の社員の距離の取り方について。同じ会社の社員でもあるぶん、これが難しいんです……。

仲間と仲良くなるのはいいことだけど……

当社の支援担当が支援する相手は、同じ会社ではたらく社員。つまり「仲間」を支援することになります。支援担当のメンバーの中には、かつて病院でカウンセリングをしていた者がいるのですが、『病院のカウンセリングと社内の支援担当の違いは何か』と聞くとこんな答えが返ってきました。

「一番驚いたのは、支援を担当する社員との距離の近さです。病院でカウンセリングをしていたときは、自分自身の話はまったくせず、患者さんとしっかり距離を取っていました。でも、いまは自分の趣味や経歴を伝えることや、たわいもない雑談をすることも。この距離感の近さにびっくりしました」

確かに自分のことを話すお医者さんやカウンセラーはいなかったな、と自分が通院していたころを振り返って納得しました。

距離が近すぎると何が起こるのか

会社の同僚だと考えれば、会社帰りにお酒を飲みながら上司の愚痴を言って……なんてことも、別にダメじゃない(薬を飲んでいる社員への配慮は当然必要ですが)。でも、あまり仲良くなって距離が近づきすぎると、何となくよくない気がする……。なかなか「正しい距離感」が自分の中で見つからない。私はこの距離の取り方が苦手です。

支援する相手との距離が適切でない場合、業務に支障をきたすこともあります。例えば、距離が近すぎると、本人が自分で考える前にすぐ支援担当者に聞いてしまい、依存関係のようになり、自立を妨げてしまうこともありました。

その人にとって最適な距離感を見つける

こうした経験を振り返って私が思うのは、「すべての人に等しく同じような態度を取ればいいのかな」ということです。

もちろん同じ会社ではたらく仲間として、趣味や好きなことの話を通じて距離を縮めることは必要です。共通の話題を通じての支援という形も一つの正解だと思います。しかし、先に書いたように自立を妨げる可能性がありますし、また周囲の社員を「なんであの人にだけは距離が近いの?仲が良いの?」と不自然な気持ちにさせてしまう懸念もあります。そのような状況を避け、支援担当者としての役割をまっとうするためには、適切な距離を保つ必要があるのです。

「すべての人に等しく同じような態度を取る」というのは、全員に対して画一的な距離と関係性を保つということではありません。相手の言葉に共感して寄り添うという態度を一貫し、それによって“各々にとって適切な距離感と関係性を築いていくこと”が理想です。

これからもこの「距離の取り方」は、常に頭の中に入れておこうと思います。