
通院しているジョブコーチが、障害者手帳の取得を迷った経緯
ここでお話しするのは初めてかもしれませんが、ジョブコーチである私は、かつてメンタルクリニックに通っていました。最初の受診は約10年前。以来5年ほど通院し、その後一度通院を終えましたが、最近になって再び2カ月に1度の頻度で通院を再開しています。
日常的にずっと調子が悪いわけではありません。突発休は2カ月に1度くらい、午前休・午後休は月に1~2度程度。また、なんとなく「低調」だったり、周囲のネガティブな言葉にダメージを食らうことが、ほかの人の1.5倍くらいある感覚でしょうか。こうした状態を薬で補っているイメージです。
特例子会社で、精神・発達障害のある社員の定着支援に関わっている仕事柄、障害者手帳の取得を支援する側の立場です。障害者手帳のメリットは頭では理解していました。それなのに、いざ自分事になると「取っていいのだろうか」という抵抗感が湧いてきました。それが、当時の正直な気持ちです。

「取ってよいのだろうか」――障害者手帳への抵抗感と向き合う
障害者手帳の取得を迷うとき、頭に浮かぶのは「デメリット」の文字です。私もネットで「障害者手帳 デメリット」と検索しました。しかし、読み進めるうちに気づいたのは、自分が本当に知りたかったのはデメリットの一覧ではなく、「取得しても大丈夫だよ」という許可だったのだと気づきました。
とはいえ、障害者手帳のデメリットとして一般的に挙げられる不安についても、目を背けずに向き合っていく必要があると感じました。よく言われるのは次のようなものです。
- 心理的な負担——「自分が障害者だと認めることになる」という障害者手帳への抵抗感
- 周囲に知られる不安——手帳を持っていることが職場や家族に伝わるのではないか
- 保険・ローンへの影響——生命保険や住宅ローンの審査に不利にならないか
※団信の告知義務で問われるのは健康状態や通院歴であり、障害者手帳の取得そのものが審査に直接影響するわけではありません。 - 取得・更新手続きの手間——診断書費用や2年ごとの更新が負担にならないか
- 就職活動での選択の悩み——一般枠か障害者雇用枠か、かえって迷いが増えるのではないか
このリストを見たとき、私が一番引っかかったのは「心理的な負担」でした。支援する側として「手帳はツールですよ」と伝えてきた自分が、いざ当事者になると抵抗感を覚える。その矛盾に気づいたことが、考えを一歩進めるきっかけになりました。
主治医の言葉をきっかけに見えてきた、障害者手帳のメリット・デメリットの捉え方
迷いを抱えたまま、あるとき主治医に「自分も手帳の取得は可能でしょうか?」と聞いてみました。すると医師は比較的フラットなトーンで「必要ですか? でしたら診断書を書きますよ。取得する理由は何ですか?」と返してきました。
当時はそこまで深く考えていなかったため、「生活面でのサポートで通院費用を考えると取ったほうがいいのかなと…」と答えました。実際、障害者手帳を取得すると、税金の減免のほか、等級や自治体の制度によっては医療費の助成を受けられる場合もあります。なお、精神科の通院医療費を軽減する「自立支援医療」は手帳とは別の制度ですが、あわせて活用することで日常生活の負担を軽くできる可能性があります。
その後、医師はこう言いました。「手帳は生活をフォローするツールであり権利ですから、取得するのはいいと思いますよ」。この一言で、景色が変わりました。それまで「障害者手帳を取得すること=自分が障害者だと証明されること」だった認識が、「使える道具を一つ増やすこと」に書き換わった瞬間でした。デメリットにばかり目が向いていましたが、税金の減免や医療費の助成といった具体的なメリットが自然と見えてきました。
障害者手帳のメリット・デメリットを並べてみて気づいたこと――境界はグラデーションだった
当社の当事者社員がこう教えてくれたことがあります。「手帳のあり/なしは、例えば普通の骨折だけで済むのか、骨折後に後遺症に悩まされるかの違いみたいなものです」(※個人的見解で、症状や病歴によって見解はさまざまあると認識しています)。
この言葉と医師の「ツールであり権利」という表現を重ねたとき、障害者手帳のメリット・デメリットを天秤にかけること自体がナンセンスかもしれない、と思えてきました。持つか持たないかは厳密な線引きではなく、延長線上にあるグラデーションのようなものだと感じました。取得したからといって自分が変わるわけではなく、選択肢が一つ増えるだけなのだと感じました。
障害者手帳の取得を迷っている方へ――デメリットの先にある視点
障害者手帳のデメリットを調べているとき、本当に求めているのは「リスク情報」だけではないかもしれません。私がそうだったように、「取得していいんだ」と思える何かを探しているのだとしたら、この記事が少しでもその手がかりになれば嬉しく思います。
もちろん障害者手帳の取得に対する解釈は人それぞれで、デリケートな問題です。今回書いた内容にも反論があるかもしれませんが、あくまでも障害者手帳の取得を迷った一人のジョブコーチの個人的見解であるとご認識いただけますと幸いです。


