「どこまで配慮すれば……?」は永遠の悩み
グループ企業から業務を受託する当社では、業務が部署の人員ごと移管されてくるケースがあります。異動してきた社員は、障害のある社員とはたらくのは初めてという場合がほとんど。そんな方々からよく受ける質問が、「どこまでの配慮が必要でしょうか」というものです。この質問にはいろんな意味が込められていると思います。どこまで仕事をお願いしていいのか、どこまで負荷をかけていいのか、どこまで障害特性に配慮すればいいのか、障害に言及していいのか……。
こうした質問に、なかなか決まった答えは見つかりません。配慮事項や業務能力は、個人のスキルや経験、障害特性によるものが大きいですから。とはいえ「ケース・バイ・ケースです」と答えられたら、質問した側も「それはそうだけどさ……」と思うはず。そこで、当社ではどんなふうに答えているのか、例を少しご紹介しますね。毎回のことではありますが、ご紹介するのは決して正解ではなく、一つの成功事例。少しでも参考になれば幸いです。
過度な先入観を持たず、コミュニケーションを取って進める
「どこまでの配慮が必要でしょうか」という質問に対して、ジョブコーチは「分からないので本人に聞いてみましょう、もしくはまずやってみましょう」と答えています。すると「でも、どこまで(障害に)突っ込んで聞いていいのでしょうか。質問によっては、メンタルの調子を崩したりしませんか?」と聞かれたりもします。答えは同じで、「そこも本人に聞いてみましょう」。ただ、「なぜその質問をしたのか、質問をしたことで調子が悪くなればすぐに止める旨を伝えましょう」とお願いもしています。
こちらが最初から過度に遠慮する必要はありません。「障害に関する質問をすると調子が悪くなるかもしれない」と心配する気持ちはわかりますが、それは本人に質問してみないと分からない。業務のペース、量、内容についても同様で、まずはお願いしてみないと、その社員がどこまでできるか正確なものは分かりません。
大事なことは、入社・配属したタイミングで、それぞれの社員に必要な配慮や、できる・できない業務の内容などを、コミュニケーションを通してしっかり確認しておくこと。そしてキャパを超えないよう調整しながら、その社員の可能性を引き出し、成長に導くことだと思います。つまり、一般企業で新しい社員を迎える際にやることと、そんなに変わらないと思っています。それよりちょっとだけ踏み込んで質問して、丁寧に仕事を見ることが必要かもしれませんが。
当社の事例やノウハウが研修コンテンツになりました
遠慮せず質問をして、恐れることなくチャレンジを繰り返し、間違ったときは素直に謝って、社員の成長する道を現場のリーダー陣と相談しながら模索していく。結構しんどい作業かもしれませんが、1年経って見違えるように成長した社員を見た時には、その苦労も吹き飛んでいくものだったりします。
当社には、精神障害のある社員とはたらくノウハウはそれなりにあると思っています。そんな当社の成功事例を「精神・発達障害者とはたらくためのマナー ユニバーサルワーク研修」としてひとつの研修コンテンツにまとめました。初めて精神障害のある社員とはたらく方々の参考になるかもしれません。気になる方は、ぜひご一報いただけますと幸いです。