パーソルダイバースの広報部に所属する、上田健人さんは脊髄損傷による四肢麻痺の障害があります。現在、高知県四万十市在住で、週に3回(月・水・木)10:00~15:30の間、在宅勤務をしています。
彼の業務内容は、パソコンを使用しての事務業務で、主に経営に関するデータの収集・分析、グラフ化などを担当しています。
パーソルダイバースでは、さまざまな障害のある社員が、さまざまな場所で講演や、外部研修の講師として登壇し「生の声」を社会に広く届けています。
上田さんは毎年、高知リハビリテーション専門職大学の学生に向けて講演を行っており、今年で3回目の開催となりました。
これまでの年は、自宅からオンラインで講演を行っていましたが、今年は初めての対面での講演が実現しました。2023年11月1日に高知四万十オフィスで開催された講演の模様をご紹介します。
「はたらくことは自分にとっての挑戦でした」
会場となったのは、パーソルダイバースの「高知四万十オフィス」。廃校になった小学校の跡地を利用して建てられ、講演は旧体育館で行われました。
自宅から介護タクシーを利用して、1時間半近くかけて会場に到着した上田さんは、約20名の受講者を前に、自身の体調のこと、仕事のこと、日常生活で利用しているサービスについて、そして、自身にとって、はたらくことの意味や、やりがい、今後チャレンジしたいことなどを流暢に、そして気持ちを込めた強い言葉で話していました。
「僕のように、重度の障害がある人は、はたらくことをあきらめる人も多いです。でも、いろいろな工夫やサポートによって、はたらくことができるということを、自分が発信することで、知ってほしくて講演をやっています。当事者の将来を考えるきっかけにもしてもらいたいと考えています」と上田さん。
不慮の事故で怪我をした上田さんは2年間のリハビリを経て、自宅で静養することになりました。
しかし静養中、「何もしない。何もない時間が苦痛で物足りなかったんです。何かをやりたい、できることを増やしたい」と考えていました。
そんなとき、支援機関の方から、「テレワークではたらいてみないか」と声をかけてもらい、就労移行継続支援B型事業所に10か月間お世話になりました。はたらくことは自分への挑戦でしたが、簡単なパソコン入力の作業を経験しながら、仕事で必要なスキルを身に着けました。
そして、ご縁があり、パーソルダイバースを紹介していただきました。「貴重な機会を失いたくない」と思い、すぐにこのチャンスに飛びつき入社をすることになりました。
講演で語られた上田さんの日常と仕事
上田さんの体はほとんど動かず入浴や着替え、排せつはヘルパーのケアが必要です。
食事は、腕に着けたバネの力を利用した補助具を使って摂っています。仕事中は、音声入力やトラックボールマウスなどを活用して工夫しています。
講演で使った、それらを説明する資料はご自身が作成しました。
「自分の道はまだ明確ではありません。ただ、長くはたらきたいと考えていることは確かです」
技術の進歩とともに、今行っている仕事がずっとあるとは限りません。そのためにも、必要な知識、スキルを身に着けて成長し、業務の幅を広げていきたいと思っています。
そして、自分の経験が役に立つのであれば、今後もこういった場で話し続けたいです。はたらきたい人がはたらけるように、背中を押す存在になりたいです」と力強く述べました。
ポジティブな気持ちで、挑戦する自分を知ってもらいたい
受講者に上田さんの思いが届いたのか、講演後の質疑応答では、様々な感想が次々と寄せられました。
「実際にはたらいている人の話を聞くのは初めてで、すごくためになりました。何をやればいいのか具体的に分かりました」「急に障害を負ったのに、前向きに自分にできることを探してチャレンジして、お話する姿に感動しました」「上田さんのように、はたらいている人がいることを、私たちのように支援する人間はきちんと知らないといけない。でも、例えば特例子会社のことなど知らない人もまだまだ多い。知らないとだめだなと強く思いました」
上田さんの思いに呼応するかのように、熱い感動が沸き上がった講演になりました。
不慮の事故で四肢麻痺という重度の障害を負ってしまった上田さんは、私たちが想像できないような辛いことが起き、悩んだことでしょう。
しかし、上田さんは、「みなさんに明るく聞いてほしいし、最後にポジティブな気持ちになってもらうことで、みなさんのモチベーションに繋がってくれると思います。できるだけ、お涙ちょうだいの話はしたくないんです」と笑顔で語りました。
講演中、キラキラとした目でまっすぐ前を見据え、ネガティブな言葉を一切使わなかった上田さんの姿。きっといろんな人の胸に焼き付いたことだと思います。