2021年4月、高知県高岡郡四万十町にパーソルダイバース株式会社の「高知四万十オフィス」が開所しました。現在同社では、障害者のはたらく選択肢が少ない地方都市に雇用機会を増やす「雇用の広域化」に取り組んでおり、四万十オフィスは高知県への初進出となります。四万十における雇用創出の取り組みや現地自治体の反応について、パーソルダイバース企画推進部の中嶋が全2回にわたりレポート。初回は現地自治体の方に、現在の課題や感想をお聞きしました。
谷脇 悠 氏
高知県商工労働部 企業誘致課 主幹
野原 斗夢
パーソルダイバース株式会社
エンプロイメント・イノベーション本部
Career&PRO受託事業部
ゼネラルマネジャー
中嶋 隆
パーソルダイバース株式会社
エンプロイメント・イノベーション本部
企画推進部
採用・育成グループ
さまざまな障害のあるメンバーが事務作業や農作業に従事
パーソルダイバースの「高知四万十オフィス」は、廃校になった旧丸山小学校の跡地を利用してオープンした障害者重点雇用事業拠点です。四万十町窪川駅から車で約10分、四万十川本流から徒歩2分に位置し、駅からは送迎もあり、また条件付きで車通勤も可能。主に、パーソルグループから委託されたパソコンを使った事務作業と、地元農家が栽培したニラの出荷補助作業を行っています。
ここではたらくのは、事務作業メンバー6名、出荷補助作業メンバー3名、管理者3名の計12名(2021年10月時点)。障害者手帳を持ったメンバーは管理者以外の9名で、身体、知的、精神と種別はさまざまです。地元四万十町だけでなく、隣接する須崎市や四万十市、遠くは高知市から通うメンバーもおり、それぞれの力を発揮して毎日業務に取り組んでいます。
パーソルダイバースと一緒に「高知モデル」を確立したい
「パーソルダイバースさんには長く、継続的に事業を続けていただき、経済効果と雇用を生み出して、ぜひ『高知モデル』として一緒に築いていきたいと考えています。その足掛かりはできたと思っています。」
そう語るのは、高知県の商工労働部で企業誘致を担当されている谷脇主幹です。県では産業振興計画の取り組みとして、コンタクトセンターやバックオフィスといった事務系部門を持つ企業の誘致に力を入れてきました。2021年8月時点、18社の企業が高知県内に進出し、1,200名を超える雇用創出につながっています。一方で、「障害者雇用という側面は想定しておらず、そういった機会もありませんでした。」とおっしゃるように、特例子会社であるパーソルダイバースが県内進出の声を挙げたときは、戸惑いもあったそうです。
「ただ、協議を重ねるたびに可能性が見えてきました。」と続ける谷脇主幹。「単なるアウトソーシングではなく、高知県内に拠点となるオフィスを出して、地元の人を採用していく。この考えに賛同しましたし、高知市以外の中山間地域に事務の企業を創出することに魅力を感じました。今までは高知市以外で障害者雇用は難しいと思っていましたが、手を挙げてくれる企業がある。これを機会に人を集めるノウハウを集積し、今後の事例につなぎたいと考えました。」
良いスタートは切れたあとは継続していけるか
そうした経緯と高知県の理解により、高知四万十オフィス開設に至ったパーソルダイバース。地域における障害者雇用の創出拠点をつくるという、一つの成功事例が出来上がりました。
しかしこれは、あくまでもスタートを切ったに過ぎません。パーソルダイバースの責任者である野原斗夢ゼネラルマネジャーは「仮に撤退しては、雇用促進・継続が無意味になる。これから10年、20年と雇用を継続し、はたらく人がキャリアパスを描き、実現できるような状態にしていきたい」と意気込みます。
高知県の谷脇主幹も、「高知県四万十町への進出は、現実問題として人が十分に集まるかなど、事業としてのハードルが高いことは認識しています。ですから、県としても最大限のフォローをしていきたい。制度を整備し、パーソルダイバースと同様の業態の企業誘致はなるべく避けるなど、アフターフォローは続けていきます。それが雇用拡大につながると思っていますので、引き続き一緒に頑張っていきたいです。」と明るい表情で期待を寄せていました。
日本一障害者にやさしい町をつくりたい
現在四万十オフィスが直面している課題は、なんといっても採用です。町の担当者いわく、「最初はパーソルダイバースの認知度が低く、地元の方からしたら、どこの企業か分からない状態。でもさまざまな方が説明会を聞きにきてくれ、いまは信頼・期待を寄せられています。特に障害がある方々にとっては『会社ではたらける』ということが何よりの朗報じゃないでしょうか。
ただ、パーソルダイバースではたらくことは、多くの方にとってはレベルが高い挑戦かもしれません。町内にある作業所で訓練をされて、一定の実力に達した方がパーソルダイバースに入社する。そんな地元との協力サイクルがうまく回ればいいなあと感じています」とのこと。
本数が少ない列車、駅から遠いオフィス、町内でなかなか応募できる当事者の方がいないことなど、クリアする課題は他にも山積みです。それに対して町の関係者は「これから連携を強化していく必要があります。町内の空き家の活用、地元企業によるグループ企業の運営、さらなる町内への告知……試すことはいろいろあると思います。町としても『日本一障害者にやさしい町』を目指し、町ではたらく人のためにできることを、パーソルダイバースさんと見つけていきたいと考えています」と前向きに話されていました。
手探り状態の中、船出したばかりの高知四万十オフィス。今後どのように運営すれば、地元の障害のある方々が“はたらいて笑える”ようになるのか。チャレンジはまだ始まったばかりです。次回は、実際にはたらいている社員や、社員を支える周囲の人々の声をお届けします。