パーソルダイバースが2019年から運営する就労移行支援事業所「Neuro Dive(ニューロダイブ)」は、国内初となる先端IT特化型の就労移行支援事業所です。データサイエンスやAI・機械学習など次世代のIT領域を担う障害者人材の育成と、障害者の新たな活躍機会の創出を目指しています。この記事では、先端IT領域での障害者の活躍可能性や、スタッフの熱い想いを紹介します。

所 孝子

パーソルダイバース株式会社
「Neuro Dive秋葉原」センター長

障害者が高度なIT領域で活躍できる世界を目指して

 Neuro Diveを一言で言うと、「先端IT人材を育成するための就労移行支援事業所」です。IT領域と聞くと、システム開発やコーディングなどの仕事を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、AIや機械学習・データサイエンス・RPAなどの先端ITは、そうした従来型のIT系よりもさらに“尖った”領域です。

なぜこうした就労移行支援を始めたかというと、背景としては大きく2つあります。1つは、日本において先端IT人材が不足していること。経産省によると、2030年には約59万人もの先端IT人材が不足すると予想されています。
※ IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 平成28年6月11日商務情報政策局 情報処理振興課

もう一つは、高学歴で先端ITにも対応できる素養を持つ方が、障害を理由に一般事務職や軽作業でしかはたらけないという現状があることです。これは就職前の学生さんにおいても同様ですね。優秀な方はいるのに、人とは違った特性があるため受け口がない。しかも、これまで発達障害の”課題”や”弱み”だとみられていた特性は、先端IT領域においては逆に”強み”となり、”武器”になりうることもわかっています。

多様性に富んだ人材である彼らの選択肢を広げてこなかったことは日本の課題だと思いますし、「障害があっても高度な領域の仕事を選べる」「特性を”武器”として活かす」という世界を実現するのがNeuro Diveの役目だと思います。

AIや機械学習、データサイエンスに必要なスキルを実践的に学ぶ

 Neuro Diveでは、先端ITの領域の業務に求められるスキルを実践的なカリキュラムを通じて学ぶことができます。
先端IT分野では、膨大な中から目的に応じたデータを抽出し、分析・可視化する能力が求められます。必要なのは「物事を突き詰める能力」や「法則や差異を見出す能力」などです。先端IT人材とはそうしたスキルをベースに、企業の課題解決を考えられる高度な人材を指します。

利用を希望される方の中にも、ちょっとしたHTMLコーディングやWEBデザインをイメージされて来られるケースがあります。そうしたスキルを学べる就労移行支援事業所は他にもあるので、似ていると思われるのかもしれませんね。でも実際は、私たちのような先端ITを実践的に学ぶことのできる事業所は日本に無二だと思います。

IT技術としては非常に高度な分野を扱いますが、もちろんそれだけではなく、就労に必要な基礎的能力である職業準備性もしっかり高めていきます。仕事をするうえで、企業はやはりそこを重視しますから。早ければ約1年間、最長で制度上限の2年間で、職業準備性と先端ITスキルを同時に身につけていくイメージです。

「やりたかった分野の仕事」利用者のニーズの高さを実感

所 社会的に人材が不足しているという話がありましたが、かといって、もともと企業側の強いニーズがあったというわけでもありません。というのも、開所当初は先端ITを障害のある方でカバーしようという発想や、障害特性が武器になるという認識が、企業側にはなかったのです。
そのため、はじめは興味・関心を持ってくれる企業はあっても、採用までイメージできるところは多くありませんでした。見学に来られても、具体的な採用の話になると止まってしまったり。一方で、利用される方や支援者の方の反応は良好でしたね。「やりたかった分野の仕事です」という声もたくさんいただきました。

私がセンター長を務める秋葉原では、利用者さんが20名以上いらっしゃいます。大多数の方が障害者手帳をお持ちで、先ほどの話のように「障害者雇用だと高度な専門職に就けない」とお悩みの方や、「一度就職したがうまく行かなかった」という方が多く、利用者さんからのニーズはあったんだと実感します。

開所から5年が経ち、現在では秋葉原、横浜、福岡、大阪、渋谷の5拠点に増えました。延べ200名以上が利用し、卒業生はデータアナリストや機械学習エンジニア、デジタルマーケティングなどを含む職種へ就職し活躍しています。企業側の採用ニーズも高まりつつありますね。