2019年11月に開設された、パーソルチャンレンジ(現パーソルダイバース)の新たな就労移行支援サービス「Neuro Dive(以下、ニューロダイブ)」。国内初となる「先端ITを学べる就労移行支援事業所」として、業界内で異彩を放つとともに注目を集めました。一体何を学ぶ支援所なのか? そもそも先端IT人材とは? 開設の経緯や気になるカリキュラムの中身を、前後半でお伝えします。まず前半は、ニューロダイブ開設に至った背景や、スタッフの熱い想いをお聞きください。
吉田 岳史
パーソルチャレンジ(当時)株式会社
コーポレート本部 事業開発部
Neuro Diveグループ
所 孝子
パーソルチャレンジ(当時)株式会社
コーポレート本部 事業開発部
Neuro Diveグループ
Neuro Dive秋葉原 センター長
かなり“尖った”ITスキルとはたらく力を同時に高める。
所 ニューロダイブを一言で言うと、「先端IT人材を育成するための就労移行支援事業所」です。IT領域と聞くと、システム開発やコーディングなどの仕事を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、先端ITはそうした従来型のIT系よりもさらに“尖った”領域です。データサイエンスやAI・機械学習などを扱うことができ、そのスキルセットをベースに企業の課題解決を考えられる高度な人材を指します。
吉田 利用を希望される方の中にも、ちょっとしたHTMLコーディングやWEBデザインをイメージされて来られるケースがあります。そうしたスキルを学べる就労移行支援事業所は他にもあるので、似ていると思われるのかもしれませんね。でも実際は、私たちのような先端ITを実践的に学ぶことのできる事業所は日本に無二だと思います。
所 IT技術としては非常に高度な分野を扱いますが、もちろんそれだけではなく、就労に必要な基礎的能力である職業準備性もしっかり高めていきます。仕事をするうえで、企業はやはりそこを重視しますから。早ければ約1年間、最長で制度上限の2年間で、職業準備性と先端ITスキルを同時に身につけていくイメージです。
障害があっても高度な仕事を選べる社会へ。
吉田 そもそもなぜこうした就労移行支援を始めたかというと、背景としては大きく2つあります。1つは、日本に先端IT人材が不足していること。経産省によると、この数年間でますます深刻化し、2030年には約59万人にまで拡大するとも予想されています※。私はもともと別のIT系就労移行支援会社に勤めていたのですが、そのころから、より高度で尖った分野の育成をしたいという思いがありました。
※ IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 平成28年6月11日商務情報政策局 情報処理振興課
もう一つの背景は、高学歴で先端ITにも対応できる素養を持つ方が、障害を理由に一般事務職や軽作業でしかはたらけないという現状です。これは就職前の学生さんにおいても同様ですね。優秀な人材はいるのに、人とは違った特性があるため受け口がない。多様性に富んだ人材である彼らの選択肢を広げてこなかったことは日本の課題だと思いますし、「障害があっても高度な領域の仕事を選べる」という世界を実現するのがニューロダイブの役目だと思います。
好反応が多い一方、企業側の意識変化も必要。
所 社会的に人材が不足しているという話がありましたが、かといって、もともと企業側の強いニーズがあったというわけでもありません。というのも、先端ITを障害のある方でカバーしようという発想自体が、企業側にはなかったのです。
吉田 開所当初は、興味・関心を持ってくれる企業はあっても、採用までイメージできるところは多くありませんでした。見学に来られても、具体的な採用の話になると止まってしまったり。一方で、利用される方や支援者の方の反応は良好でしたね。「やりたかった分野の仕事です」という声もたくさんいただきました。
所 私がセンター長を務める秋葉原では、現在利用者さんが27名。大多数の方が障害者手帳をお持ちで、先ほどの話のように「障害者雇用だと高度な専門職に就けない」とお悩みの方や、「一度就職したがうまく行かなかった」という方が多く、利用者さんからのニーズはあったんだと実感します。開所から2年と数カ月が経ち、現在では9名の方が就職して卒業されていきました(2022年2月時点)。
吉田 2019年の終わりに開所して、その後すぐコロナ禍になってしまったので、実績としてはまだまだこれから。でもリモート環境の仕組みなども整ってきたので、利用者さんにも有効な選択肢が用意できているという手ごたえはありますね。