パーソルグループの特例子会社であるパーソルダイバースは、障害のある社員1,609名のうち、6割以上の998名が精神・発達障害のある社員です(4月時点の数字)。

社内でも特に精神・発達障害のある社員の割合が多いのは、パソコンを使った事務業務を行う受託サービス第一本部。同本部では今年も300名規模の採用を計画しており、その採用責任者を務めるのが、今回登場していただく要海 亨介マネジャーです。要海マネジャーは、網膜色素変性症という目の難病と向き合いながら、自身が感じた“はたらく意味”を求職者に伝え、数多くの仲間(社員)を生み出しています。ご本人に、はたらくことの意味や熱量についてお聞きしました。

マネジャー 要海 亨介 

パーソルダイバース株式会社 受託サービス第1本部
企画推進部 受託第1採用グループ マネジャー・要海 亨介

障害を理由に夢を断念。自分には制約があると知った

編集部 要海さんが目の難病を発症したのはいつでしたか。

要海 中学生の頃、病院で初めて診断を受けました。両親が気を遣って、病気の具体的なことは聞かされておらず最初は「自分の視力は特別なんだ」と思っていた程度でした。

しかしながら、どんどん視野が狭くなり、大学時代までやっていたテニスや陸上が思い通りにできなくなりました。20歳の時に専門医の口から、決定的な治療方法がなく、徐々に視野が狭まり、暗いところでの活動が困難になり、場合によっては失明する可能性があることを告げられました。

編集部 進路や就職に際して、難病が障壁になることはありましたか?

要海 私は大手金融企業の営業職に興味があったので、大学卒業後に大手銀行のインターンシップに参加しました。インターンからは比較的就職しやすいと言われていましたが、病気のことを伝えたところ、内定は貰えませんでした。地方に行けば、営業で車を運転しなければなりません。でも、自分は病気の影響でそれができない。そのほかにも将来的には制約が増えていくでしょう。そのあたりの判断だったのかな、といまは理解していますが、人事担当者が涙を流しながら謝ってくれたのが印象的でした。

当時の私は、「この障害の人たちが進まない道を進もう」と考えていました。いま振り返ると、それは障害を受け入れる(障害を受容する)ことができていなかったからだと思います。内定がもらえなかったことをきっかけに、自分のはたらき方は制限があるんだと実感しました。

固定観念を覆した、障害者雇用の世界との出会い

編集部 その後の就職活動はうまくいったのですか?

要海 金融以外で興味のあった人材サービスへの転身を決意し、パーソルグループのパーソルキャリア(旧インテリジェンス)から内定をもらいました。キャリアや実績を重視する会社だと思って入社したので、目が見えなくなるまで必死にはたらいて、自分のキャリアを完成させようと決めました。この頃は自分の障害を受容できておらず、目が見えなくなったらそこで終わりだと考えていたのです。
そんな私を見かねて、内定者時代に会社の人事の人からパーソルダイバース(旧パーソルチャレンジ)のキャリアドバイザーを紹介してもらいました。「障害者雇用」という世界を知り、その人から聞いた話が衝撃的で、心が一瞬で軽くなったことをいまでも鮮明に覚えています。

編集部 具体的にどんな話があったのでしょうか。

要海 「私たちの職場には障害のある方がたくさんいます。ただ、その人たちが何の障害かは分かりません」と言われました。はたらくうえで、障害は関係ない。たとえ障害があっても、はたらける未来がある。

そう力説された瞬間、自分が設計していた人生40年に、いきなり40年がチャージされた思いでした。価値観がガラリと変わった瞬間でしたね。ビジネス人生も一気に伸びた感覚でした。ずっと自分だけが特別だと思ってきましたが、「自分の障害が武器になる世界がある」ことを知ったのです。

編集部 その後の仕事はいかがでしたか。

要海 障害者雇用に関わることができるパーソルダイバースに配属希望を出しましたが、別のグループ会社に本配属され、新卒採用のサポートや新しい部署の立ち上げなどに6年ほど携わりました。症状の進行を感じる中で6年前の「将来、障害者雇用の現場で活躍する人材になりたい」という気持ちを思い出し、改めて障害がある人たちと一緒にはたらきたい気持ちが強くなりました。それで、再びパーソルダイバースに異動希望を出しました。

編集部 念願かなってパーソルダイバースに異動し、2年が経ってマネジャーになりましたね。どんな2年間でしたか?

要海 最初は障害者雇用の現場を把握するために、名刺を入力するチームに配属されました。そこで障害のある社員たちの成長力と才能に驚きました。私より後に入社した人が、驚異的なスピードと正確性で入力しているのです。優れた才能を発揮することに、障害の有無は関係ないのだと実感しました。

そして採用の仕事でも、求職者の熱意に驚くことが多々ありました。前職では新卒採用の仕事もしていましたが、そこで面接を実施すると面接希望者の30%は来ないのが通説。でも、私が担当した200件の障害者雇用面接で、キャンセルはたった2件。信じられませんでした。

誰かの夢を手助けしながら、今の自分を超えていきたい

編集部 障害者雇用の採用の仕事を通じて、改めて気づいたことや、意識の変化はありましたか?

要海 障害のある人の中には、仕事内容や勤務地などで制約が生まれる人がたくさんいます。はたらくことが当たり前でない状況だからこそ、はたらくことを渇望し、はたらけるチャンスを探している人が多いことを知りました。そして採用担当として、そんな求職者の思いにしっかり応えようという責任感が生まれました。相手にとっては、一生に一度しかない貴重な機会かもしれないのですから。自分の経験と面接を通して、夢を実現する手助けをしているのだと思っています。同じ当事者だから共感できることもあるので、そんな部分も大切にしていきたいですね。

当社内で表彰される優秀な社員の多くが、「はたらくことの喜びを実感しています」と笑顔で話してくれます。以前は障害のある自分だけが悲劇の主人公だと思っていましたが、自分以外の障害のある人たちとはたらくようになって、新たな世界を目の当たりにしている気分です。多くの人がハッピーな物語の主人公であることを知ったからです。

編集部 要海さんご自身の夢はなんですか?

要海 私の夢ですか? 目が見えなくなってから、今の自分を超えることです。仕事の範囲、収入、そして人間としての在り方においてもです。

編集部 最後に、仕事を探している人にメッセージをお願いします。

Mさん みなさんが何を大事にしているのか、改めて考えてみてください。給与や勤務地の問題、障害への不安など、さまざまな理由から諦めることも多いかと思います。でも企業の中には、当社のように拠点ごとに定着支援担当がいて、キャリアの昇進も可能なところもあります。

できるだけ多くの会社見学や説明会に参加してみるのも手です。最近の会社説明はオンライン説明会が主流ですので、スーツ着て電車に乗る必要はありません。自身の正解を見つけるために、選択肢を広げることが大切です。まずは一歩、踏み出してみましょう。