

パーソルグループの特例子会社であるパーソルダイバース いすみ絆工房(千葉県)では、障害者雇用における農福連携の取り組みとして、地元特産品である食用菜花(なばな)の栽培を始めました。地域産業への貢献を通じて障害者が活躍できる機会を広げることを目的にしています。
この記事では、いすみ絆工房での地域連携事業の取り組みと、工房ではたらく障害のある社員がどのようにはたらき、活躍しているのかをご紹介します。
※本記事は2024年3月に実施したインタビューをもとに執筆しています。

パーソルダイバース株式会社
受託サービス第2本部 東京・千葉事業部
いすみ絆工房グループ 販促品チーム
戸田 崇晴

パーソルダイバース株式会社
受託サービス統括本部
受託サービス第2本部 東京・千葉事業部
いすみ絆工房グループ 販促品チーム
長谷川 歩
いすみ絆工房:地域の特産品である菜の花収穫に貢献
いすみ絆工房は、2021年5月に千葉県いすみ市と締結した障害者雇用に関する包括連携協定に基づき、同年7月8日に障害者雇用事業所として開所しました。
開所当時は、パーソルグループ内でノベルティとして活用している入浴料の梱包作業をはじめ、一人ひとりの特性に合わせた軽作業を行っていましたが、2024年から3月末までの間、新たな試みとして、地元の社会福祉法人土穂会 障害者就業・生活支援センター ピア宮敷が栽培する食用菜花(なばな)の収穫作業をスタートしました。
いすみ市の特産品としても有名な菜の花は、市民や団体、ボランティアの方々によって毎年菜の花を鉄道沿線に咲かせる観光スポットとしても人気があります。しかし、しかし、収穫繁忙期の1月から3月には人手不足となり、収穫作業が追い付かないという課題がありました。いすみ絆工房は、地域産業である菜花の収穫量向上に貢献することで地域とのつながりを深め、障害者が社会で活躍できる機会を広げることを目指して取り組んでいます。


重度の知的障害のある社員が活躍「自分にぴったりな職場」
2022年1月からいすみ絆工房ではたらく戸田崇晴さん(重度の知的障害)は、菜花の栽培作業に取り組んでいます。
最初は作業の判断が難しく、戸惑うこともありましたが、だんだんと慣れていき、今では1日の収穫量が目標を超えることもあるほど成長しました。
「収穫の判断で教わったのは、収穫に使うハサミの長さで、菜花の茎を切るということです。これだったら、赤ちゃん菜花を切らなくて大丈夫。最初の1週間くらいは慣れなかったけれど、だんだん慣れてきました。」
戸田さんにとって、茗花の仕事はただの作業ではなく、外の空気を吸いながら広い場所ではたらけることが大好きだそうで、これからもずっとやりたいと話しています。
戸田さんがいすみ絆工房を選んだ理由は、通勤距離が自分に合っていたからです。
「僕は長時間電車に乗れないので、近くではたらける場所を探していました。ここは地元で、通勤が短いので、非常に助かっています。入社前の実習で2週間通うことができたし、スタッフの人も、「作業が上手だね」と褒めてくれました。ここに入るのが自分にはぴったりだなと思いました。もし、ここが決まっていなかったら自分は会社員になれなかったかもしれません。パーソルダイバースがあって良かった。地元ではたらけて良かったです。」

入社後も通じて仕事を覚え、また同僚や上司とのつながりを実感でき、毎日を楽しく感じていると言います。工房には自分のペースで成長できる環境が整っており、それが自信へとつながっています。
戸田さんはこれからの目標について「新しい作業にも挑戦する予定です。それをちゃんとできるようにして、自分にできることを増やしていきたいです」と笑顔で話してくれました。
重度障害があっても、できる仕事や可能性は広げられる
いすみ絆工房では戸田さんだけでなく、他の社員もさまざまな仕事に挑戦しています。
工房で指導員を務める長谷川歩さんは、もともと地元のグループホームではたらいていましたが、障害者領域で仕事がしたいと思い、いすみ絆工房に入社しました。
「私はそれまで事務職の経験しかありませんでしたが、さらに障害者領域に進みたいと思い求人に応募しました。入社する前は、小さな工房で障害がある方と一緒に何かを作っている仕事をイメージしていたのですが、想像していたより大きな規模の、パーソルグループの会社だったと知り、驚きましたね。よく採用してくれたなぁと感謝しています。」
長谷川さんは、社員一人ひとりができることを広げ、地域に貢献することを目指しています。
「私は上司のチームリーダーとともに、業務の指導や体調管理など、現場のマネジメント全般を担当しています。1月からは菜花栽培のため、片道30分をかけて、社用車のドライバーもしています。
入社して予想外だったのが、『重度の知的障害』と言われる社員が、予想以上に多くの作業ができること。そしてさまざまなことのチャレンジしようとする意欲があることです。世間一般のイメージでは『任せるのは危ないから』という理由で、能力があるのに仕事がない、機会が少ないということがあります。しかし、それは『できる仕事や社員の可能性を広げる余地がたくさん残っている』とも言えます。できること・仕事の幅を広げることが、結果として地域の雇用促進に繋がります」と語ってくれました。

おわりに:障害者が成長し、地域に貢献できる職場を目指して
長谷川さんは、いすみ絆工房が地域にもっと溶け込み、欠かせない存在になること、そして地域の障害者のためにできることを増やしていくことが、自身のやりがいにもつながっていると話します。
「一緒に菜花収穫をしているピア宮敷さんは地元では知られた存在で、当事者の人やその保護者から頼られる存在です。私たちもこの取り組みを通じて認知度を上げて、もっともっとこの地域のために存在価値を高めたいと思っています。社員ができることを増やす、仕事を増やす、そして、地元の仕事をするなど、地域に還元できれば、『障害者雇用といえば、パーソルダイバースいすみ絆工房』と思ってもらえる存在になれる。そのスタートとして、菜花の収穫は大事な作業です。この作業は1月~3月の短期作業ですが、これをきっかけに、この地域に通年で仕事を通じて携わることができれば、私の夢も実現に一歩近づきます」
いすみ絆工房では、戸田さんや長谷川さんのように、自分の仕事に誇りを持って取り組む人がたくさんはたらいています。工房では重度の知的障害をはじめ、さまざまな特性を持つ方が安心してはたらけるようサポート制度も整えています。仕事を通じて仲間とのつながりを感じ、はたらく楽しさや自己成長を実感できる場です。
地域社会とともに成長し、「はたらいて、笑おう。」を実現するーーいすみ絆工房の挑戦は続きます。
パーソルグループではいすみ絆工房以外にも、地域と連携した取り組みを行っている事業所があります。withマガジンでは様々な事業所を紹介しているほか、「お仕事図鑑」では農作業や養蚕など地域から受けて取り組んでいる仕事を詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。

