
「仕事が続かない」「はたらきたいのに、不安で辛くなる」そんな悩みを抱えていませんか?
発達障害や精神障害がある方にとって、仕事探しや職場ではたらき続けることは簡単ではありません。
そして、キャリアを築いていくこともまた難しいでしょう。
それまでの経験やスキルだけでなく「不安」や「環境との相性」など、障害特性が大きく影響しています。
今回は、双極性障害Ⅱ型を抱えながらパーソルダイバース株式会社ではたらくT.Aさんにインタビュー。
Tさんの仕事の仕方、特性との向き合い方から見えてきたのは、特別な努力ではなく、「自分の特性を理解すること」と「安心できる環境を選ぶこと」の重要性でした。
仕事を見つけたい方、続けたい方に向けて、具体的なヒントをお届けします。
強い不安と、周囲の目が気になった幼少期から学生時代

編集部:まずはご自身の障害について教えてください。
Tさん:私は今年36歳になります。もともと幼少期から、家とか母から離れることに対して強い不安を感じていました。中学生になると、今度は慣れた環境から離れる不安に加えて、「周囲の人からどう思われているのだろうか」という、周りの目みたいなものがとても気になっていました。
この感情は高校卒業後も日常的に続いていて、外出もできない状態になり、家族に連れられてクリニックに行き、最初はうつ病と診断されました。
服薬治療を続けていたのですが、4、5年経っても症状は改善しませんでした。そこで別の病院に行ったところ、双極性障害と診断され、適切な治療を受けたことで少しずつ症状が改善していきました。
編集部:Tさんの双極性障害の特性を教えてください。
Tさん:私の場合、躁状態のときはイライラが強くなるという実感があります。些細なことで感情が高ぶって、とても強い言葉で家族をなじってしまう。そうすると今度は反省というか、一気に気分が落ち込んでうつ状態になってしまいます。そして、エネルギーが溜まってくると、また気持ちが昂る。その繰り返しのような状態です。
そして、そんな自分に対して不安になり、「こんな自分は周囲からどう思われているんだろう」と不安が強くなります。高校を卒業して、治療に専念していましたが、特に20代中盤から30代前半ぐらいのころが、一番きつかったですね。当時の記憶はあまりないのですが、社会との関わりと言えば、親戚が営む会社でアルバイトをしていたことくらいでした。
就労移行支援事業所で、自分を見つめ直し、できることを武器に就職をしました

編集部:そこから就労に向かわれた経緯を教えてください。
Tさん:アルバイトを続けるうちに環境にも慣れて、少し気持ちに余裕ができて職業訓練校に通いましたが、途中で退校しました。そのとき、「自分には支援が必要かもしれない」と実感し、精神障害者手帳を取得しました。一度は就職したのですが、すぐに退職。その後は就労移行支援事業所に通って、自分を見つめ直し、自分には何ができるのかをじっくり考えました。そして、就労移行支援事業所スタッフから「ここならあなたの不安を解消できる環境がある」と勧められ、2022年11月にパーソルダイバースに入社しました。
「不安は我慢するもの」ではなく「伝えるもの」

編集部:入社後、業務が安定していると聞きました。何か理由はあるのでしょうか。
Tさん:いまはパソコンを使った事務入力作業をしながら、数人のメンバーの健康管理や業務指導などを行っています。入社から4年目に入りましたが、いまでも不安がなくなったわけではありません。ただ、その不安との付き合い方を見つけたと言ってもいいのかもしれません。
「不安は我慢するもの」ではなく「伝えるもの」だということを仕事を通じて実感しました。もともと、当社は上司や定着支援チームなど、相談できる相手がしっかりといます。そして、相談することを経験すると、少しずつ自分の不安が軽くなる・少なくなることを実感したんです。
そこで、家族、上司、定着支援チーム、主治医、友人、支援機関、それぞれにケースバイケースでため込まずに相談するようにしました。
不安の予兆を感じたら、自分から発信するようにしています。たとえば、業務でわからないことがあったとき。「あとで聞こう」と思って抱え込むのではなく、その場で確認する。些細なことでも、都度相談するようにしています。このシンプルな行動が、不安の蓄積を防ぎ、結果として体調の安定にもつながっていると思っています。
編集部:はたらくうえで重要視しているポイントはありますか?
Tさん:私は、「曖昧に説明されると、不安が強くなる」「初めてのことには強い緊張を感じる」「大きな声や威圧的な態度が苦手」という特性があります。そしてそれは、自分の気持ちが弱いからだ、と思い込んでいました。
でも、支援機関や周囲への相談を通じて、それは自分の特性なんだと受け止めています。そしてその考え方が仕事選びにも影響して、やりたいことにチャレンジしたいというより、「安心してはたらける環境を選びたい」という基準に変わりました。いまがまさにその「安心してはたらける環境」だと思っています。
そしてそれは、少しだけ勇気を出して、自分で作り出すことも必要だと感じました。自分の場合はしっかりと相談することでした。あとは業務で無理をしないこと。以前は頑張りすぎてしまうこともあったかもしれません。でもいまは、「続けること」を優先するようになりました。少しずつでもいい。一日一日安定してはたらき続けることを積み重ねる。それがやがて自信につながり、自分の特性である「不安」が少しずつ減っていくんだと思っています。
キャリアアップしたのは、挑戦というより恩返し、の気持ちが強かったから

編集部:昨年の6月にサブリーダーに昇格されました。このキャリアアップは自ら望んでいたものですか?
Tさん:それが違うんです。私は先ほど言ったように、日々安定してはたらくことを続けられればそれでいいと思っていました。でも、「サブリーダーにならないか」と打診されたときに思ったのは、そう言ってもらえるほど安定できるようになったのは、上司や医師、支援機関の方々が相談に乗ってくれたからだと。
だから今度は、自分のように不安が強い人のフォローを少しでもすることが恩返しになるかもしれない、と思ってサブリーダーになりました。
編集部:改めて、いま仕事を探している人にメッセージや伝えたいコツなどはありますか?
Tさん:抽象的ですが、「自分に合うはたらき方を探すこと」ではないでしょうか。私の場合は、多くの相談相手を見つけ、悩みが出るたびに解消するように努めました。また、仕事や会社に自分を合わせるのではなく、自分に合った環境を見極めました。
もちろん、私のやり方だけが正解ではないと思っています。もし、いま悩んでいるのであれば、少しだけ考え方を変えるとか、いままでとは違うアプローチをしてみる。「みなさんに合ったはたらき方はきっとある」。このことは私の経験からお伝えすることができると思っています。「私でも見つかったんだから、皆さんも納得できる仕事や会社に出会える」と、心からそう思います。


