パーソルグループでは毎年、障害者雇用支援月間である9月に、障害のある方をはじめ、あらゆる方々が“障害とともに生きる・はたらく”ことについて考え・深めていただくイベントを開催しています。今年も9月25、26日の2日間、2つのsession(オンラインイベント)が行われ、障害のある方や企業担当者、支援関係者など744人に視聴いただきました。
この記事ではイベントの様子をダイジェストでお送りします。記事の最後にはアーカイブ動画を掲載していますので、合わせてご覧ください!

9月25日開催のsession1:『本音で話そう!障害×はたらくWell-being 2024』では、脊髄性筋萎縮症のあるパーソルテンプスタッフの金村茂治さん、障害のある子どもの育児と自身のキャリアを両立する「ビジネスケアラー」としてはたらく、パーソルダイバースの登嶋由紀さん、アイドルグループ「仮面女子」メンバーの猪狩ともかさんが登壇し、障害やはたらくことへの想いについて本音で語りました。

初めに、金村さんと登嶋さんから、それぞれの背景やはたらくことの意味などを語っていただきました。

登壇者

猪狩ともかさん

タレント、アイドルグループ「仮面女子」メンバー

金村 茂治

パーソルテンプスタッフ株式会社
営業推進本部 事業推進部
本部戦略推進室

登嶋 由紀

パーソルダイバース株式会社
人材ソリューション統括本部
人材ソリューション本部 人材紹介事業部
東日本RA第2グループ

司会

大出 恵

パーソルダイバース株式会社
人材ソリューション統括本部
人材ソリューション本部 キャリア支援事業部
首都圏CA第2グループ

16歳で脊髄性筋萎縮症と診断。はたらくことで初めて実感した、自分の存在意義

金村 私は全身の筋肉が萎縮する病気で足や腕の力も出なくなる進行性の病気を持っています。小学生のときに走ることや、階段をのぼるのがたいへんになっていて、そのときから病気を意識しました。そして16歳のとき脊髄性筋萎縮症の診断を受けました。

大学卒業後、就労支援施設で5年くらいはたらいたのちパーソルテンプスタッフに入社しました。最初は書類のファイリングなどの事務作業がメインでしたが、いまは業績管理や戦略企画に関する業務を担当しています。

大出 職場ではどのような配慮を受けていますか?

金村 細かい部分で配慮や手伝いを受けています。一番大変なのはトイレです。排せつ行為の際に自分では車いすから便座に動けないので、一般社員にズボンを脱がせてもらうことや便座への移動を手伝ってもらっています。いつも感謝の念しかありません。入社時に男性社員に介護研修を受けてもらうなど、この会社に入って本当に良かったなと実感しています。

■配慮を受けるありがたさ、当たり前ではない大切さを実感

大出 いま、はたらいて幸せを感じている、という感覚はありますか?

金村 間違いなくイエスです。仕事ですからいろいろありますが、それは手帳の有無は関係ないと思います。自分はこれまで「親切や善意を受ける側」として、周囲から当たり前のように配慮を受けていたのですが、「当たり前」なっているからこそ、そのありがたさに気づけていませんでした。

それが仕事をする側になってみて、人から「ありがとう」と言われるようになったときに初めて、自分の存在意義を実感するとともに、支える・支えられることのありがたさや、決して当たり前ではないという大切さに気付きました。自分には妻と2人の子供がいて、僕の収入で家庭が成り立っている。自分がサポートを受けながら、自分でも家庭をサポートしているのがはたらくやりがいになっています。会社や周囲の人、家族や自分自身に良い影響があること。それを考えると「はたらいて幸せ」という言葉が自然に出てきます。

障害がある子供の子育てと仕事の両立。大切なのは頼る場所を作ること

登嶋 私には小学生の子供が2人おり、2人とも保育園に通っているときに発達障害がわかりました。2歳児検診などで、医師から通院を進められて診断を受けました。それが縁じゃないですが、障害に関する多くのサービスを提供している当社に入社しました。

大出 子育てと仕事のたいへんさ、みたいなものはありますか?

登嶋 たいへんさ、には「障害がある子供の子育て」と「仕事と子育ての両立」の2種類があると思っていますが、私は「子育てと仕事の両立」のほうがしんどいな、と実感しています。「障害がある子供の子育て」は、障害によってコミュニケーションが難しい、クラスになじめないなどの「突発的な問題」があります。その問題を自分一人で抱えているときは、しんどいなと感じるでしょう。ただ、自分の場合は地域や預け先、学校や病院など、の機関に助けてもらっているのでそこまでしんどくはないですね。

当初は療育のセンターやソーシャルワーカーさんからアドバイスをもらっていました。それから同じ環境を持つ方と繋がって、自然と情報や頼る場所が増えていきました。自分と同じ環境にある方と繋がることで、自分だけではないと気持ちが楽になります。

子供を預けている放課後デイサービスにも本当にお世話になっています。安心して子供を任せられる環境を持つことはすごく大事ですね。

■自分の状況を素直に、具体的に伝える

大出 子育てと仕事を両立するコツはありますか?

登嶋 自分の状況をなるべく具体的に伝える、ということを意識してやっています。取引先の企業様にも「子供の状況によっては連絡が取れない時があります」としっかり伝えています。そうすると「お互い様だよね」と理解していただくことがほとんどです。誰しも「自分の病気」「家族のケア」「子供の看病」など、さまざまなケースがあると思います。誰にでもあるからこそ、素直に伝えることで大きな理解を得ているなと実感します。

大出 登嶋さんにも同じ質問するのですが、いまはたらいて幸せを感じていますか?

登嶋 はたらいているとプレッシャーもあるので、常に幸せを感じているというわけではないですが、いろんなチャレンジをできているのは幸せです。つい先日も自分と同じような環境の人に向けた支援事業を起案していました。与えられる仕事だけでなく、人の役に立ちたい、自分の経験を活かしたいと思って始めたチャレンジはとても楽しく、はたらくやりがいや生きがいは自分で作っていくものだなと改めて感じているところです。

はたらくことに制約があったり、時間に余裕を持てない環境にいる人に強く勧めたいのは「やらなくていいことは、やらない!」ことです。他人と比較することをやめて「やるべきことをやる」を実行していたらすごく楽になりました。やりたいことを優先して、それ以外は段取りよく「さっさとやる」といった業務設計はしていますね。

あとは周囲に「頼ること」を思いっきりやる、そして。体調を大事に、無理しないことですね。

はたらく幸せ「はたらくWell-being」を実感するために必要なこととは?

後半では、猪狩さんから登壇者への質問、またトークセッションが行われました。

■猪狩ともかさん「無理をしない。自分から発信を心掛ける」

猪狩 金村さんのお手洗いの介助の話を聞いて、これは一般的にはヘルパーさんがやることかなと思うのですが、それを社員がやっている。本当にいい会社なんだなと思いました。

金村 本当に感謝しかありません。自分の場合は最初に「自分ができないことリスト」を作って職場に渡しました。会社として動いて、社員に協力を促してくれたのが大きかったです。

猪狩 登嶋さんのお話で共感したのはネットワークを作って情報交換することでした。私も入院していたときに「車いすで行ける歯医者さんはどこ」といった情報を教えてもらうこともあり、そういった小さなことの積み重ねは大事だなと思いました。このネットワークはインターネットではなく、「障害者の輪」といったような関係性ですね。同じ病棟の患者さんや看護師さんとの会話で広がる輪です。

そして、私も登嶋さんと同じく無理しないというマインドになりました。長時間稼働のときは、すきま時間に横になれる場所はないかと尋ねるなど、自分からの発信を心掛けるようになりました。車いすに座っているからすごく楽ちんと思う人もいるかもしれませんが、常に同じ姿勢や恰好をするのはとても疲れます。ライブ会場でもステージに上がるまで階段を上る際は、スタッフさんに車いすごと運んでもらう必要があります。日々、感謝しかありません。

私も日々幸せを感じています。みなさんが楽しんでいる姿や笑顔を見ると、たいへんなことがあっても力をもらえ、幸せを感じる日々です。

■感謝の気持ちが人間関係をつくる

大出 みなさんが、はたらくWell-beingを実感するために必要だと思うこととは何でしょうか。

金村 環境を整えることは大事だと思います。トイレや階段移動など、はたらく環境を一つひとつ確認して、「できること」や「がんばればできること」に集中する。どうしてもできないことはありますので、それは「できない」ときちんと伝えて会社の理解を得るために自分から発信することが大切だと思います。環境が整ってからは頑張りましょう!

登嶋 できないことだけでなく、「こんな工夫をしたらできた」「今日はこれができた」という成功体験に目を向けることは大事かなと思います。自分が家にいられないときでも、デジタルツールを使って家事や育児をするなどして、結果として何とかなったらそれでいいのかな、と思っています。お弁当をしっかりつくらなきゃ、ではなくて「冷凍食品が活用できる」と頼れるものは頼っていい。その積み重ねが自分を後押ししてくれると思います。

猪狩 障害の有無関係なく、幸せに気持ちよくはたらけるために必要なのは人間関係だと思うんです。小さなことで言えば、朝、現場に入る際の「おはようございます」のあいさつ。そういったことで1日気持ちよくはたらける。手助けしたいな、と思えるような人間であることも大事。何かしてもらったらきちんとお礼を言う。当たり前のことを当たり前にすることが、まず必要なことだと思います。