精神・発達障害のある人にとって、また企業にとって、障害者雇用における「キャリアアップ」は常に取り上げられる大きな課題です。
パーソルグループの特例子会社パーソルダイバース株式会社では、多くの障害当事者が、マネジャーやチームリーダー、サブリーダーとして活躍しています。同社では、過去にマスコミ向けの会社説明会を実施し、1回目は同社の経営陣による、はたらき方の仕組みや評価についての説明でした。
2回目の昨年は、その仕組みのもと、実際にはたらく社員による座談会を実施しました。
そして、3回目は同社で実際に役職者として活躍する当事者役職者社員3名が登壇。マネジメントへの思い、キャリアアップに向けてチャレンジしたことなどを、参加したメディア記者の前で紹介しました。
さらに、参加した記者からも「一般企業のマネジメントと大きな違いを感じなかった」との声が上がるなど、その実態は多くの示唆を含む内容となりました。

うつ病、双極性障害と向き合い、キャリアアップした社員が登壇

イベントのスケジュール表。冒頭の説明と自己紹介の後、精神・発達障害の当事者役職者による座談会を中心に、最後に質疑応答が行われる構成。

登壇したのは、マネジャー・チームリーダー・サブリーダーの3名。それぞれ異なる障害特性がありながら、組織の中核を担っています。
マネジャーのMMさんは、うつ病があり、特に大きな特性である睡眠障害に悩まされているそうです。時には一睡もできずに会社に向かうことも。体を動かしたり、薬をうまく活用したりしながら、体調を調整し勤怠と業務の安定に向き合っています。
女性チームリーダーのMTさんも、うつ病があり、不安や発声の課題を抱えながらも、「支援への恩返し」という強い動機で役職者へ。今後は同社にもまだいない、「障害者×女性×マネジャー」へのキャリアアップを目指しています。

サブリーダーのATさんは、双極性障害Ⅱ型。特に不安が強く出る傾向があり、という自身の状態と向き合いながら、周囲への相談や自己発信を重視。「支えられる側」から「支える側」へとキャリアを広げました。

3名が所属する受託サービス第一本部はパソコンを使った入力などの事務業務がメインです。それぞれの特性を活かし、安定した勤怠や、的確な自己認知、また順調なキャリアアップを実現させていることから今回の登壇メンバーに選ばれました。

なぜキャリアアップできる?パーソルダイバースの障害の有無に関わらない「共通の評価制度」

記者からの質問で多かったのが評価についてでした。障害の有無で評価制度が違うのか。キャリアアップに違いがあるかといった質問が寄せられました。それに対してMMさんは下記のようにはっきりと回答していました。

  • 障害の有無に関係なく、共通の目標設定制度を使用。昇格においても障害の有無に関係なく同じ基準
  • 目標達成基準が明確なため、評価には悩みにくい
  • 特性があるから評価を下げる/上げることはしない

また、「業務もやりながらマネジメントもするのは大変ではないのか」という問いに対して、MTさんは「マネジャーなどの管理者は実務比率を抑え、メンバー対応や対話に時間を割ける仕組みとなっています。 チームリーダーの私も同様です。具体的に言えば、サブリーダーの場合、実際に業務に入るのは業務時間の3割までと決まっています」と答えていました。

サブリーダー以上は業務が安定的に遂行されているか、メンバーそれぞれが業務や人間関係に悩まされていないか、現状の体調はどうか、などを個別面談などを通じて細かくチェック。そのことが、質の高いサービスの提供と正確な納期の順守につながるだけでなく、年間300名以上の採用や、年間約5%前後という低い離職率の維持にも貢献しています。長く安定的にはたらけるからこそ、キャリア形成が可能となっています。
実際に参加した記者からも、「一般的なマネジメントと大きな違いは感じにくい」という声が上がりました。

マネジメントをしたから深まった、特性など障害がある自分の自己認知

「障害に向き合いながらマネジメントをすることで得たことはあるか」という記者の質問で印象的だったのが、サブリーダーATさんの回答です。
「メンバーが何に悩んでいるのか、業務のどこにつまずいているのか。そういった悩みを聞くことで自分との比較を改めて行います。すると自分の悩みや特性が分かりました。さらにマネジメント力を高めて、チームの成果に貢献したいという、今後やりたいことが明確になりました」
座談会後のアンケートではすべての参加記者に「満足」と回答を頂き、現場のリアルな声への関心の高さがうかがえました。
また、「当事者の管理職の話を直接聞く機会は少ないため貴重」という意見もあり、今後も「当事者の生の声を外部に届け、障害理解を広げたい」という開催者側の思いも強まりました。

まとめ:精神・発達障害者のキャリアアップを実現するために必要なこと

今回の座談会から、キャリアアップには以下のことが必要だということが、当事者の声を通じて見えてきました。これは当事者本人と雇用する会社の双方に努力が必要なようです。

  1. 自己理解
    自身の特性を把握し、無理のないはたらき方を構築すること
  2. 公平な評価環境
    障害の有無に関係なく、成果で評価される仕組み
  3. 対話と支援の文化
    上司や組織が定期的に対話し、挑戦を支える風土

まずは入社後、安心・安定してはたらくこと、長くはたらくための仕組みを整え本人や周囲が努力することが大切です。長期就労により仕事に慣れ、今後やりたいことが見えてきて、「キャリアプランを明確にする」または「後押しする」ため、障害の有無に関わらず共通の評価制度をベースにしながら社員のモチベーションを上げていくことを重視しています。こういったプラスのサイクルが障害者雇用の促進を後押しするのではないでしょうか。今後、精神・発達障害者のキャリアアップは「可能かどうか」ではなく、「どう実現するか」というフェーズへ移行していくことが期待されます。
当事者にとってのはたらき方、企業側にとっての受け入れの仕組みの準備、そのヒントが詰まった座談会となりました。