パーソルではたらく障害のある社員が、障害についてや職場での工夫、はたらく想いについて語ります。
ある日突然、若年性アルツハイマー型認知症を発症し、自分のやっている仕事や一緒にはたらく人のことがわからなくなってしまった渡邉さん。就労移行支援への通所を経てパーソルに入社し、再びはたらくよろこびを取り戻しました。その経験を誰かの役に立てたいと、現在は実習生の受け入れや社外での講演活動に力を入れています。

※本記事は2022年9月に実施したインタビューをもとに執筆しています。

パーソルダイバース株式会社
渡邊 雅徳

受託サービス企画推進本部 人財開発部
人財開発グループ 研修運用チーム
2022年入社/アルツハイマー型若年性認知症

発症:ある日突然、若年性アルツハイマーに

40代のある朝「自分が何の仕事をしているか」が分からなくなったのを皮切りに、一緒にはたらいている人が分からなくなったり、コピーするよう書類を渡された直後に「この紙は何ですか?」と聞き返したりすることが続きました。若年性アルツハイマー型認知症を発症したのです。

休職をして復職を目指しましたが、職場の人から心無い言葉を言われることが度々あり、結局職場を辞めてしまいました。

就職:病名で断られることも。実習を通じてパーソルへ入社

退職後は、認知症カフェでのサポートや、認知症支援団体のスタッフ、自分の障害についての講演などの活動を始めました。そうした中で「就労移行支援」という制度を知り、事業所に通いながら就職を目指すことに。しかし病名のインパクトもあってか、2年間で書類審査さえ1社も通りませんでした。

そこで方針を変え、実習や体験を通して実際に会っていただく所から始めようということになり、パーソルサンクス(現:パーソルダイバース)の実習に参加しました。

その後、入社面接までこぎつけたものの、面接中に今までのいろいろな思いがこみあげてしまい号泣。これはダメかと思いましたが、無事採用され、またはたらけることになったのがとても嬉しかったです。

仕事:支援機関から来る人をサポートする立場に

支援学校や就労移行支援事業所から実習に来られる方をサポートするのが私の仕事です。

私が実習に来たときお世話になった部署で、今は社員としてはたらいている……少し変な感じもしますが、私自身とても就職活動で苦労したので、その経験を今ここで役立てています。

記憶することに難があるので、これまでの失敗談としては「メールの返事を相手から催促されるまで放置してしまう」「作業の途中で別の作業を始めて最初の作業を忘れてしまう」「自分が人にお願いしたことを自分自身で思い出せない」などがあります。

今のところ、どれも大事に至るほどの失敗ではありません。しかし、いずれ症状が進行し、比較にならない程の失敗をしてしまう日が来るかもしれません。乗り越えなければいけない苦労の日々はこれから始まると思うと、万全の態勢を整えておかなければならないなと考えています。

職場での工夫:周囲との連携や自己管理を怠らない

まずは周囲との連携をしっかりすることです。Outlookを活用し、スケジュールの細かい確認や日々の出来事の記録、部署内での情報共有等をしています。何らかの不具合が出たらミーティングですぐに共有し、社内の精神保健福祉士にも報告します。入社前に通っていた就労移行支援事業の定着支援も、引き続き利用しています。

こうした支援を気軽に活用できるのは、特例子会社であるパーソルダイバースならではの大きな強みだと思います。就労移行支援事業所・認知症支援団体との連携体制が確立されているため、何かあればさまざまな角度から支援を受けることができます。

個人的な心掛けとしては、忘れ物の管理が一番ですね。1人暮らしのため、絶対に忘れてはいけない物事に関しては、起きてすぐ目に入るドアに付箋メモを貼ったり、玄関ドアのレバーにあらかじめ掛けておいたり。財布やスマートフォンは、昔から置き場所やどのポケットに入れるかを決めているので、幸い忘れたりしたことはありません。使うカバンは一つに決めておき、必要なものはすべてそこに入れておく、などの工夫もしています。

これから:障害による体験を活かし、社会の架け橋に

いつも実習が終わるたびに、実習生の方々からたくさんの「ありがとう」をいただきます。たくさんの「ありがとう」をかたちにすることによって得られる、心からの笑顔。そんな笑顔を共有しながらはたらき続けることが、私にとっての「はたらいて、笑おう。」です。

私は入社前に、自分の経験を伝える講演活動を行っていました。今でもその活動を継続しており、土・日・祝日の他に平日に登壇することもあります。パーソルグル-プでは、職場での経験やスキルと、社外活動で得た経験やスキルを、お互いに還元し合って相乗効果を生み出してほしいという想いがあります。

私もゆくゆくは業務で学んだことを講演活動に、講演活動で得たことを日頃の業務に活かして相乗効果を生み出し、パーソルグループと社会の架け橋になっていきたいと思います。そしてこれから一緒にはたらく可能性のある方々に、こんなメッセージを送りたいです。自分の可能性を閉じることなく、いつか掴む光を信じて、ともに「はたらいて、笑おう。」ではありませんか。